母ぐま子ぐま

作:椋 鳩十
絵:村上 康成
発行:理論社

出版社からの内容紹介:
「しんでは いけない。しんでは いけない」はげしい いたみに 気が遠くなるなか、母ぐまは 二ひきの 子ぐまを 思い、のうみその おくの方で さけびました。
いのちの きけんと となりあわせの 野に 生きる、くまの 母子の あいを えがいた お話です。

この絵本を読んで:
母親の、子供に対する愛情の深さを描いたお話なんですが、一方で、自然や熊たちの生活ぶりがとてもくわしくわかりやすく描かれています。

春の雪どけのなだれの音が、ねざめ前のお母さんのやさしい歌のように気持ちよく響いてくると表現されていたり、冬眠から覚めたばかりの食事のようすでは、子グマがぺたんとおしりをついてすわって、さわがにを食べるところなど、思わずにっこりとしてしまいます。

そんな熊の母子を、二人の狩人が4匹の犬とともに狙うんですが、母熊は子グマを助けたい一心で力を振り絞って犬たちの攻撃を振り払います。

そして、自分たちを襲った狩人に対しては、にらみつけ、うなるだけで去っていきます。無益な殺生はしないというのが自然界の掟なのかもしれません。

最初にも書きましたが、この絵本は母親の子供にたいする愛情がどのぐらい深いものなのかが描かれています。この絵本を手にしたお子さんたちが、自分の身に置き換えて、おかあさんの愛情を感じ取ってもらえたらと思います。

今の世の中でも愛情深いお母さんがほとんどだとは思うんですが、一方で親が子供を虐待したり、はては殺したりするといったニュースが後を絶ちません。

この絵本を手にした子どもたちが大人になったとき、そんな殺伐とした社会にならないような世界を作ってもらえたらと願います。

3つのなぞ

作:ジョン・J・ミュース
訳:三木 卓
発行所:株式会社フレーベル館

出版社からの内容紹介:

「なにをすることが いちばん だいじなんだろう?」
「いつが いちばん だいじなときなんだろう?」
「だれが いちばん だいじな人なんだろう?」

ロシアの文豪トルストイの「三つの疑問」を、子どもたちに親しみやすい形に変え、人としての真理を優しく説いたミュースの会心作。

ミュースは、トルストイの作品には多くの知恵があり、それを子どもの成長の手助けにしたくて、身近な世界におきかえた絵本を作ったといいます。たとえ十分には理解できなくても、幼い心に何か印象的なものとして残れば、それに惹かれて、またそれを理解しようとして、その後何度も絵本を手にとることになるでしょう。そしていつかきっと、心の支えになってくれる。人生をともに歩いてくれる絵本だと思います。

この絵本を読んで:

主人公のニコライという男の子が3つのなぞについて友だちのサギ、サル、犬に質問をします。それぞれが答えるんですが、ニコライは納得できません。

それで、レオというお年寄りのカメだったら答えを教えてくれるんじゃないかと、会いにいきます。

そこで、畑仕事をしていたレオの仕事を手伝うんですが、突然の激しい雨と風。その風雨でけがをしたパンダの親子を助けます。

パンダの親子が元気を取り戻したあと、ニコライは改めてレオに3つのなぞについて質問をすると、レオは、「もうその答えは、自分で出してしまっている」と言います。

まず最初に、レオの畑仕事を手伝っているそのときが一番大事なときで、大事な人はレオ。そして、畑仕事を手伝うことが一番のなすべきことであると答えます。そして、けがをしたパンダの親子との出会いが、次の一番大事なときで、大事な人はパンダの親子。そのパンダの親子を助けることが一番のなすべきことだったと答えます。

自分自身を振り返ってみると、ニコライと同じように漠然と、「自分は何がやりたいんだろう、何ができるんだろう」と考えていた時期がありました。そして、その答えが見つからないまま、「今」を大事にしてこなかったように思います。

レオが最後に、「自分たちがこうして生きているのは、3つのなぞの答えを知るためなんですよ」と諭すんですが、これは、「答えはあとになってわかる」「だから、生きている今、その時々を一生懸命生きなさい」と教えてくれているように感じました。

この絵本のはじめに、ニコライがこう言います。「ぼくは、いい人間になりたいんだ」と。

この思いがあるからこその悩みであり、3つのなぞが生まれるような気がします。

くろくんとちいさいしろくん

なかや みわ/さく・え
発行所:童心社

出版社からの内容紹介:ちいさくてしろいくれよんが、まいごになりました。くろくんたちは、力を合わせてしろくんのなかまをさがしますが見つかりません。くろくんたちはしろくんをなかまにおむかえすることにしました。けれどある日…。

この本を読んで:くろくんとちいさいしろくんにはそれぞれ仲間がいるんですが、まいごになったしろくんをくろくんたちは仲間として気持ちよく受け入れます。そして、仲間探しに疲れて休むときなんかには、くろくんは自分が休む場所をしろくんに譲って自分は箱の外で寝るんですね。そのやさしさがじ~んときます。そして、なかなか仲間が見つからないしろくんをくろくんたちは自分たちの仲間に入れてあげることにして、しろくんの居場所を作ってあげたりもします。結局、しろくんの仲間がしろくんを見つけて、しろくんは仲間のところに帰っていくんですが、くろくんたちはしろくんがいなくなったさびしさがありながら、しろくんが仲間のところに戻れたことを喜びます。そして、くろくんたちはこのことで仲間の絆がより深まります。思いやりの心を、くれよんという小さい子どもたちには身近な題材でわかりやすく教えてくれていますから、きっと子どもたちの心にいつまでも残るんじゃないかと思いました。

そらはあおくて

シャーロット・ゾロトウ/文
なかがわ ちひろ/訳
杉浦 さやか/絵
出版社:あすなろ書房

出版社からの内容紹介:
古いアルバムの中でほほ笑むのは、今とは違う服を着て、今とは違う家に住む女の子。お母さんも、おばあちゃんも、昔は「小さな女の子」だったなんて、ほんとかな?でも、いつの時でも、空は青くて、草は緑……。

この本を読んで:
お母さんが女の子に、お母さんやおばあちゃんが小さかったときの写真を見せるんですが、女の子はそのアルバムの頃の時代と今とを比べて、違いを見つけていきます。でも、お母さんはその写真を見せながら、時代は変わっても変わらないものがあることを優しく繰り返して話します。たぶん女の子は、その時点ではわかったようなわからないような感じなんだろうと思います。
アルバムを見終わったときに女の子が「おわっちゃった・・・」と言うんですが、お母さんは「続きがあるのよ」と言って、「あなたもいつか自分の写真をあなたの子どもに見せながら話をしてあげて」と話します。
時代は変わっても変わらないものがある、そして、それがとても大切なもの、大切なことであることを教えてくれる絵本だと思います。

注意読本

著者:五味太郎
装丁:ももはらるみこ、たけちれいこ
発行所:ブロンズ新社

出版社からの内容紹介:子どもの生活には、とにかく注意すべきことがいっぱい! すこやかに、そして力強く生きてゆくためには、ぼんやりしてなどいられません。ユーモラスかつシニカルな視線で、子どもの生活のなかにある注意点を切りとった、五味太郎による子どものくらし方読本。

この絵本を読んで:まず、最初に、「すこやかに そして力強く暮らしてゆくためにはぼんやりしていてはいけません いろいろと注意しましょう」と、あって、それから、起きてから寝るまでに注意することがリズミカルに展開していきます。注意することがたくさんありすぎて、精神的にまいってしまいそうになるんですが、最後には、「注意のしずぎは あなたの健康を害するおそれがあります 注意しましょう」と、あって、思わず、ホッとしてしまいました<笑>

ユーモアというかウイットに富んだ言い回しに、ついつい引き込まれて一気に最後まで読んでしまいがちですが、その中には作者からの大切なメッセージが含まれていますので、そこに注意して(^_^)、読み進めてもらいたいと思います。

「食事に注意」では、食品に対する意識、「世間に注意」では、マナーについて意識することをやんわりと伝えてくれています。そして、「自動車に注意」では、「これは かなり代表的な注意ですから かえって ときどきわすれてしまったりすることがありますので あらためて 注意しましょう」と、注意を喚起しています。

中国の書物『孝経』に、「身体(しんたい)髪膚(はっぷ)これを父母(ふぼ)に受く あえて毀傷(きしょう)せざるは孝の始めなり」(人の身体はすべて父母から恵まれたものであるから、傷つけないようにするのが孝行の始めである)と、あって、まさにこのことをこの絵本は伝えてくれているように感じました。

「夢に注意」では、「なるべく 悪い夢を見ないですむような 正しい暮らし 楽しいくらしのあり方について 注意しましょう」とあり、毎日の基本的な過ごし方というものを教えてくれているように思います。

たくさんの注意事項ではありますが、この絵本を何度か読んでいるうちに、いつのまにか記憶され、そして、毎日の生活の、その時々に、無意識にうちに思い出され、役立つのではないかと思います。

メルリック

作:デビッド・マッキー
訳:なかがわちひろ
発行所:光村教育図書株式会社

出版社からの内容紹介:メルリックは、心やさしい魔法使い。人間の仕事を何でも魔法でホイホイやってあげていました。ところがある日、魔法が底をついて、大混乱! さあ、どうする? 初版から40年以上を経て絵をすべて描き直し、改めて今、世に問う意欲作。

この絵本を読んで:心やさしいメルリックは、魔法が使えなくなったあと、だれもが苦労して働いているのをみて、「かわいそうに。早く魔法を取り戻して、助けてあげよう」と思います。そして、魔法大王のクラ先生にその気持ちを伝えるのですが、その話を聞いたクラ先生は、「おろかなメルリックよ。おまえのしたことは、誰の役にも立っていない」と叱ります。納得のいかないメルリックは言い訳をするのですが、クラ先生は、「人々は、魔法の力に頼るようになった。おまえがそうさせたのだ。そして、魔法がなくなった今、何一つ自分ではできない。それでも助けたことになるのかね?」と諭します。メルリックは返す言葉がありません。
 そんなメルリックにクラ先生は最後のチャンスを与えます。
 再び魔法が使えるようになったメルリックがお城へ帰ると、メルリックがいないことをいいことに、敵が攻めてきていました。「今こそ、魔法を使うときだ」と、メルリックは思い、魔法で敵の兵隊を黒猫に変えてしまいます。そして、城内にいる犬を放って黒猫を追い払います。この絵本の良いところは、魔法の力で敵を殺したりするのではなく、黒猫に変えて追い払うだけです。そして、黒猫が自分のお城に帰ったら人間に戻るだろう、と言います。心やさしいメルリックならではの魔法の使い方に感心することしきりです。
 魔法なんてあるはずない、と思う子もいるかと思いますが、わたしたちの身の回りは、何でもやってくれる魔法のようなもので溢れています。確かに便利ではあるんですが、果たして本当にそれでいいのかと、この絵本を通して、お子さんたちと考えてみてはどうかと思います。そして、本当に必要なものと、無くてもいいもの、無いほうがいいものを選別する力を養うことによって、自分でなすべきことというものが判断できるようになるのではないかと思いました。
 宿題をやってくれるロボット、なんて、必要ですか?(^_^)

手ぶくろを買いに

作:新美南吉
絵:松成真理子
発行所:岩崎書店

出版社からの内容紹介:はじめての冬をむかえた子ぎつねは、手ぶくろを買いに町へおりていきました。母ぎつねは、子ぎつねの手のかたほうを、人間の手にかえてやりましたが、子ぎつねがぼうし屋にさしだしたのは、まちがったほうの手でした。
いまなお読む人の胸をうつ、南吉童話の不朽の名作。

この絵本を読んで:母親の、子どもに対する愛情、そしてやさしさというものが伝わってくる絵本です。こういう絵本を通して、おかあさんがどれだけ自分のことを大切に思ってくれているか、自分が子ギツネになったつもりで読んだり聞いたりできるといいですね。そして、この絵本を読んだあとに、動物たちに対する愛情が深まることも期待します。
間違って、キツネの手のほうを出したにもかかわらず、手ぶくろを売ってくれた帽子屋さん、そして、帰りに垣間見た人間の母親が子どもに歌って聞かせている子守歌と母子の会話を聞いて、「ちっともこわくない」と思ってしまった子ギツネ。そんな、子ギツネの話を聞いて、あきれながら、「ほんとうに人間はいいものかしら。」とつぶやく母ギツネの心情は、はたしてどうなのか、、、。自分としては、人を信じる気持ちは持ってもらいたいと願いますが、世の中には、良い人もいれば悪い人もいますから、まずは先入観を持たずに接し、そのあとで、その人の善し悪しを判断できるような人になってもらえたらと思います。

せかいでいちばんおかねもちのすずめ

ぶん:エドアルド・ペチシカ
え:ズデネック・ミレル
やく:きむら ゆうこ
発行:プチグラパブリッシング

出版社からの内容紹介:「もぐらとずぼん」(福音館書店)をはじめ、「もぐらのクルテク」シリーズでお馴染みズデネック・ミレルの楽しい絵と、「りんごのき」(福音館書店)や「ぼくだってできるさ!」(冨山房)などで知られる原作者エドアルド・ペチシカの名コンビが1963年に発刊した絵本の邦訳版がついに誕生しました!

この絵本を読んで:とにかく、絵がかわいい、というのが一番の印象です。このブログをはじめてから、はじめて絵に引き込まれました。
この絵本には四羽のスズメが登場するんですが、そのうちの一羽は、頭の毛がぼさぼさだから、ぼさぼさくん、と呼ばれています。ぼさぼさくんは最初は見つけたえさを独り占めしてしまうようなスズメだったんですが、えさよりも、みんなと楽しく遊ぶことや一緒にいることのほうがいいと気付きます。そして、最後には自分が見つけたえさをみんなと分け合ってたべます。
もちろん食べることは生きていく上で必要不可欠なことではあるんですが、有り余るほどの食べ物は必要なく、それよりも、仲間を大切にすることを教えてくれるような本だと思いました。
教訓的なことが含まれていると思うんですが、それを無邪気なスズメを主人公にすることによって、さりげなく伝えてくれているように感じました。
うちにも毎日スズメが顔を見せてくれるんですが、一羽一羽、その仕草や行動が異なっていて、見ていて飽きません。砂浴びをして、穴の中から顔を覗かせる姿は本当にかわいいです。ものぐさなスズメはちょっとした移動でも歩かずに飛び上がって移動します<笑>。この絵本を読んだことによって、これからまたスズメたちを見る目が変わってきそうです。

ええことするのは ええもんや!

作:くすのき しげのり
絵:福田岩緒
発行所:株式会社えほんの杜

出版社からの内容紹介:がっこうからの帰り道。くるまいすで動けなくて、困っているおっちゃんに出会ったマナブ。ちょっとそこまでと、くるまいすを押してあげているうちに、道行くみんなに「りっぱやわ!」「えらいわねぇ」と言われて…。「ともだちやもんな、ぼくら」の3人組が、ボランティアについて考えます。褒められるのって気持ちいい。でも、ええことするのって、感心されたり褒められたりするため?

この絵本を読んで:永平寺の前貫首・宮崎奕保禅師が「善いことをしていて、善いことをしているという意識がない。それが本当の善いことなのです。」ということをおっしゃっていて、なるほどなあと思っていました。マナブくんもきっと最初は意識していなかったんだろうと思いますが、周りから言われて、意識するようになってしまったんだろうと思います。
人が見ていようがいまいが、正しいこと、良いことをする。自分もそう心がけようと、改めてそう思いました。
困っている人に出会ったとき、「何か力になりたい、手伝ってあげたい」と思っても、塾に行く途中だったり、お使いの途中だったりすると、どうしても自分のことが優先になったりしますし、具合が悪くて倒れている人なんかを見かけたときは、せっかくの善意がかえってその人の症状を悪化させたりすることも考えられます。
この絵本を読みながら、マナブくんのとった行動について、また違った対処の方法があったんじゃないか、などなど、話し合ってみるといいかもしれません。

おてんとうさまがみてますよ

作:山本省三
絵:日隈みさき
企画協力:靑谷洋治
出版社:PHP研究所

出版社のまえがき:「おてんとうさまがみていますよ」ぼくがいたずらをしていると、ママがこのごろいうくちぐせ。おてんとうさまって、わるいことばかりじゃなくて、いいことしててもみてるのかな?

この絵本を読んで:そう言えば、自分も子どもの頃、母にそう言われていたことを懐かしく思い出しました。また、誰からも評価されず、つらい思いをしているときなどに、「おてんとうさまがちゃんとみてくれてる」と、自分で自分を励ますことも多々あったように思います。
おてんとうさまがいったい何なのか、太陽とみるのか、それとも神様や仏様とみるのか、はっきりとした答えはわかりませんが、ただひとつ、自分自身を戒めるためにある言葉じゃないかと思います。
「誰もみてないからいいや」と、ゴミを捨てようとしたりするときなんかに、ふと思い出すような言葉ですね。やはりきっと小さい頃によく言われていたんでしょう<苦笑>
良いことも悪いことも、誰かがみているとか、誰もみていないからとかいって、することではないんですが、なかなか難しいですね。そんなときに、ひとつの歯止めとなるような言葉でもあるように思います。