わらしべちょうじゃ

文・絵:いもとようこ
発行所:金の星社
発行年月:2021年10月 初版発行

出版社からの内容紹介:
やさしいこころが もたらした おおきな しあわせ
働き者のたろうに、観音様がもたらしたのは一本のわらしべ。青年の優しい心が、わらしべを次々と立派なものに変えていき、やがては大きな幸せをもたらします。日本が誇る名作を、いもとようこの世界で味わえる一冊。

随感随筆:
 子どもの頃に読んだか、あるいは、聞いたことがあるだけなのか、はっきりと覚えていないが、「お金にならないような物が物々交換によって価値ある物へと換わっていき、最後には億万長者になる」という流れだけが頭に残っていて、「いただきものを知り合いにあげたところ、お返しに高級メロンをもらった」ときに、「なんか、わらしべちょうじゃみたいだなあ」、なんて、思うぐらいだった<苦笑>
 今一度この絵本を読んでみると、なんとも言えない幸福感に浸ることができた。
 主人公のたろうが長者になったのは、たろうが心優しい人物であること、朝から晩まで一生懸命働いていたからこそであって、他者への思いやりもなく、何もしないで楽をして、長者になったわけではない。
 観音様(かんのんさま)から、「このお堂を出て、最初に手にしたものを大切にするのじゃ。」と言われたのにも関わらず、困っている人がいたら、それをあっさりと手放して他者に施す心。無理やりに交換させられた馬が死にそうな状態にあっても、優しい言葉をかけながら世話をする人柄が招いた必然の結果なのだと思う。
 そして、大きな幸せを手にしてからも、決して怠けることなく、一生懸命に働くことによって、「真の長者」になれるということを教えてくれる絵本だと思う。

 最後に、この本の題名「わらしべちょうじゃ」の「わらしべ」が気になって調べてみた。
 「藁(わら)」は、稲や麦などの茎を乾かしたもの。「しべ」は漢字で「稭」と書き、稲の穂(ほ)の芯(しん)の部分のことらしい。自分はこの「しべ」を、花の生殖器官「雌蕊(めしべ)、雄蕊(おしべ)」の「蕊(しべ)」のことだと思っていた。これだと「わらしべちょうじゃ」の意味が通らない。「わらしべ」の意味もわかり、これでやっと読み終えた気がする。
 

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