としょかんライオン

ミシェル・ヌードセン/さく
ケビン・ホークス/え
福本友美子/やく
発行所:岩崎書店
発行年:2007年4月

出版社からの内容紹介:
いつも静かな図書館にライオンが現れ、みんな大あわて。でも心やさしいライオンは、すぐにみんなと仲良しに。ところがある日…。深い感動を呼び世界で話題の絵本。

この絵本を読んで:
図書館には図書館の決まり事があります。例えば、大きな声は出さない、走ってはいけない、などです。
そんな図書館が舞台のこの絵本。ある日、いつもの静かな図書館にライオンが入ってきます。驚いた図書館員のマクビーさんは、館長のメリウェザーさんのところに慌てて報告に行きます。
決まり事にうるさい館長は、ライオンが決まり事を守っているかどうかをマクビーさんに尋ね、特に守っていないということではないようなので、そのままにしておくことにしました。
ライオンはお話の時間が始まると、子どもたちと一緒にじっと聞いています。しかし、お話の時間が終わったことを知ると、思わず大きな声で吠えてしまいました。
大声を出したことで、「静かにできないなら、出て行ってもらいます」と館長に叱られ、悲しそうにうなるライオン。そこで、小さな女の子が、「静かにするって約束すれば、明日もお話の時間に来ていいんでしょ?」と館長にお願いをします。館長はライオンをみつめ、「静かにできる、お行儀のいいライオンなら、もちろん明日も来ていいですよ」と言いました。子どもたちは大喜びです。
ライオンはよほど嬉しかったのでしょう。次の日から、お話の時間が始まる前に、館長のお手伝いをします。そして次第に、言われなくてもいろいろなお手伝いをするようになりました。ライオンのことを怖がっていた人たちもだんだんと慣れ、人気者になっていきます。

そんなある日、高いところにある本を取ろうとした館長が脚立から落ち、倒れて動けなくなってしまいます。マクビーさんを呼んできてほしいと館長から頼まれたライオンはマクビーさんのところに行き、そのことを必死で知らせようとしますが、大声を出してはいけないため、館長のいる部屋の方に鼻を向け、「くいん、くいん」と鳴くしかありません。

ところが、マクビーさんは知らん顔。もうこうなったら、方法は一つしかありません。ライオンは今まで生きてきた中で一番大きな声で吠えました。

決まりを守れなかったライオンは、次の日から図書館に来なくなりました。図書館に来る人たちも寂しそうです。そして、館長もどこか寂しそうにしています。

館長の気持ちを察して、マクビーさんはライオンを探して回ります。なかなか見つからず、図書館に戻ってみると、雨に濡れ、入り口の扉をしょんぼりと見つめているライオンを見つけました。そこで、マクビーさんはライオンに、こう声をかけました。

「あのう、ご存じないかもしれませんが、図書館の決まりが変わったんですよ。大声で吠えてはいけない。ただし、ちゃんとしたわけがあるときは別。つまりその、怪我をした友だちを助けようとするときなど、ってことですけどね」と。

すると次の日、ライオンが図書館にやってきました。

そのことを知った館長さんは、椅子から飛び上がると、思わず、駆け出します。

マクビーさんは、にやっとして、館長に、「走ってはいけません!」と声を掛けましたが、館長には聞こえませんでした。

子どもたちをはじめ、図書館に来ている人たちみんな大喜び。逆立ちをしている子もいます。そして、ライオンに抱きついている館長。ライオンもとっても嬉しそうです。そんな場面で物語は終わります。

決まり事や約束は本来ならば、守らなければならないことです。理由があるからと言って、簡単にそれを破っていい訳はありません。

大事なことは、決まり事や約束を破ったさい、そのことを頭ごなしに叱ったり怒ったりするんじゃなく、なぜ守れなかったのかをよく聞いてあげることだと思います。そして、その理由をちゃんと聞いてあげた上で、判断をするということが大事なんだと思います。何がよくて何が悪いのか、一概には言えませんが、叱るほうも叱られる方もどちらも納得できる解決策を見つけようとする姿勢を持ちたいですね。

どんなかんじかなあ?

中山千夏・文
和田 誠・絵
発行所:自由国民社
発行年:2006年4月(第4刷)

この絵本を読んで:
この絵本の主人公は「ひろくん」。体が段々と動かなくなる病気のため、電動車いすに乗っています。

そんなひろくんの友だち「まりちゃん」は目が見えません。それで、目が見えないってどんな感じなんだろうと目をつぶってみます。すると、たくさんのいろいろな音が聞こえてきます。驚いて目を開けると、前と同じ、しんとした世の中に戻ります。

まりちゃんに会ったとき、ひろくんはこう言いました。

「見えないってすごいんだね。あんなにたくさん聞こえるんだものね。見えるって損だね。ちょっとしか聞こえてないんだものね」と。

もう一人の友だち「さのくん」は耳が聞こえません。それで今度は耳栓で耳を塞いでみます。そして窓の外に目をやると、青空に浮かぶ飛行船、チョウチョなどが目に飛び込んできました。また、お母さんの顔にほくろが七つあることに初めて気づきます。

さのくんに会ったとき、ひろくんはこう言います。

「聞こえないってすごいんだね。あんなにたくさん見えるんだものね。聞こえるって損だね。ちょっとしか見えないんだものね」と。

そう話すひろくんに、さのくんは「考えすぎ~」と吹き出します。

手話ができないひろくんの言葉を口の動きで読み取るさのくんにまたまたびっくり。

もう一人の友だち「きみちゃん」は震災で両親を亡くしています。ひろくんは、どんな感じなんだろうと、一生懸命考えますが、わかりません。そこで、きみちゃんに会ったとき、「きっと、すごおく さびしいんだろうね」と、聞いてみました。

きみちゃんは、ちょっと考えてから、「そうでもないよ」と、答えます。

ひろくんは、「ほんとかなあ、ほんとかなあ・・・」と、つぶやきます。

今度は反対に、きみちゃんがひろくんの立場に立って、動けないっていうことがどんな感じなのか試してみました。

じっと空を見ていたら、いつもの百倍くらいいろんなことを考えて、わかったこともたくさんありました。

そして、ひろくんに、「だからひろくんは学者みたいなんだね」と伝えます。

きみちゃんの言葉にひろくん自身も、動けないことってすごいことなんだと、知ることができました。

ひろくんは、その後も、宇宙のことや分子のこと、古代のことを考えますが、最後に、「動けるって、どんな感じかなあ」と、つぶやきます。

相手の立場に立って、相手を思うことの大切さを教えてくれるひろくん。そして更には、相手のマイナス面ではなく、プラスの面を見つけ出す視点を持つことの大切さをひろくんは教えてくれているように思いました。

この絵本では、障害を持った子どもたちが登場しますが、著者のあとがきにもあるように、私たちみんなそれぞれが、何かしらの問題や悩みを抱えていると思います。そして、それを表には出さず、心の中にしまっている。そういった他者の立場を推し量り、思いやる気持ちをも育ててくれる絵本だと思います。

障害を持っていても明るくふるまうひろくん。でも、「動けるって、どんな感じかなあ」という最後のつぶやきは、さすがに切ないですね。また、きみちゃんの「そうでもないよ」という一言には言葉がつまります。こういう思いをしなくてすむような社会になることを願うばかりです。

著者あとがき:
にこにこ、すてきな女の子に会った。やりたい勉強があって、大学をめざしてはりきっていた。電動の車椅子に乗っていた。体のなかで、自分で動かすことができるのは、指先と、目や口だけだった。日に日にだんだん体が動かなくなる病気。聞いたこともない難しい名前の病気。日本で三人くらいしか例がなく、治療法は今のところ、ない。

にこにこ、すてきな女の子だった。彼女と会って、話して、いろいろなことを考えた。障害のあるともだちのこと。ないともだちのこと。自分自身のこと。みんなそれぞれ何かしらどうにもならない辛さを背負っているということ。でも生きられる。いっしょになら生きられるということ・・・・・・。彼女は私にいろいろなことを考えさせてくれた。そして、「どんなかんじかなあ」が生まれた。ひろくんと彼のともだちの話が、あなたにいろいろな考えを運んでくれたらいいな、と思う。

ちいさいおうち

バージニア・リー・バートン/文・絵
石井桃子/訳
発行所:岩波書店
発行年:1965年12月(第1刷)、1998年11月(第43刷)

出版社からの内容紹介:
 静かないなかに、ちいさいおうちがたっていました。リンゴの木や畑にかこまれて、たいへんしあわせでしたが、まわりに工場がたち、電車が通って、にぎやかな町になると、ちいさいおうちは、白いヒナギクや、リンゴの木がお月様の光の中で踊っているいなかの景色を夢見て、さびしく思うのでした・・・・。
 人間の生活に自然がどんなに大切かを、詩にみちた文章と、美しい動きのある絵で見事に描き出した絵本の改訳決定版。この本は、1942年にアメリカの最優秀絵本として、コールデコット賞をうけました。

この絵本を読んで:
 田舎の小高い丘に建てられた一軒のちいさいうち。このきれいで丈夫な家を建てた人は、「どんなにたくさんのお金をくれると言っても、この家を売ることはできないぞ。私たちの孫の孫のそのまた孫のときまで、この家は、きっと立派にたっているだろう。」と、言いました。その言葉通り、長い間、丘の上から周りの景色を眺めながら、幸せに暮らしていきます。
 朝になると、日が昇り、夕方になると、日が沈み、月が出ます。月は三日月から段々と丸くなっていき、それからまだ段々と細くなっていきます。月が出なくなると、星を眺めます。この頃は、街の灯りはずっと遠いところに見えていました。
 春が来ると、野原の草も緑に変わり、リンゴの花がいっせいに咲き始めます。小川では子どもたちが遊んでいます。
 夏には、木々の緑に包まれ、丘は、ひなぎくの花で真っ白になります。リンゴの実は赤く熟しはじめ、子どもたちは池で泳ぎます。
 秋になると、霜が降り始め、木の葉は黄色や赤に染まります。畑の収穫が終わると、リンゴ摘みがはじまります。
そして、冬が来ると、家の周りは雪で真っ白になります。子どもたちはそりに乗ったり、スケートをしたりします。
そんな季節の移り変わりを、ちいさいおうちはじっと見てきました。

 ところが、そんなのどかな風景も、都市化が進み、変化していきます。
 馬車にかわり、自動車が走り始めます。そして、道路が拡張され、道の両側にはたくさんの店や家が並び始めました。人々もなんだか忙しそうです。
 ちいさなおうちはそういった建物にすっかり取り囲まれ、やがて住む人もいなくなり、お掃除をしてくれる人もいなくなってしまいました。季節の移り変わりを感じることもなく、いつが冬なのか、いつが夏なのかわかりません。人々はさらに忙しく、掛け歩くようになっていきました。
 ちいさいおうちはすっかりみすぼらしくなってしまいましたが、壁や屋根は昔と同じようにちゃんとしていました。
 そんなある日、ちいさいおうちを建てた人の子孫にあたる人がそのうちの前を通ります。よく見ると、おばあさんが小さいときに住んでいた家とそっくりです。調べてみると、やはりその家でした。そこで、ちいさいおうちを元のような場所に引っ越しさせることにしました。そして、あちこち探し回るうちに、広い野原の真ん中にちいさな丘が見つかりました。丘の周りにはリンゴの木もあります。
 ちいさいおうちは引っ越しをすませ、丘の上に落ち着いて、うれしそうです。また、ちいさいおうちには人が住み、面倒をみてくれるようになりました。なにもかもが元通りになり、夜は静かに更けていきました。

はだかの王さま

アンデルセン/作
バージニア・リー・バートン/絵
乾 侑美子/訳
発行所:岩波書店
出版年:2004年9月

出版社からの内容紹介:
『ちいさいおうち』の作者バートンによる、有名なアンデルセン童話の絵本。すらりとした王さまや、ミュージカルを思わせる美しい展開はバートン流。ほんとうのことをいえない大人たちの姿を滑稽に描きます。

 バートンが絵本化したアンデルセンの有名なお話「はだかの王さま」。
はだかの王さまときくと、なぜかでっぷり太った姿を思い浮かべますが、バートンの王さまは、すらりとした気品のある王さま。本全体が、ミュージカルの舞台を見るような美しい展開です。
 1949年の作品ですが、これまで入手できる原書は印刷の状態があまりよくありませんでした。アメリカのホートン・ミフリン社が。オレゴン大学に所蔵されていた原画をあらためて撮影する機会に恵まれ,新版としてよみがえりました。
ぜひ一度、手にとってご覧ください。

訳者からのメッセージ:
 この本は、『ちいさいおうち』の作者バージニア・リー・バートンが、アンデルセンの有名なお話に絵をつけたものです。アンデルセンの王さまは、かなりおばかさんですが、バートンの描く王さまは、少しおばかさんぐらいです。心やさしく、みえっぱりではあっても、王さまの都の人々は楽しく暮らしているのですから、ほんとうはいい王さまなのです。
 すみずみまでユーモアにとんだ絵と、ゆかいでありながら、だいじなことの語られるお話。何度もページをめくりなおしては、そのたびに新しいお気に入りの場面を見つけ、読み終えると、なぜかとてもしあわせな気持ちになっている、こんな絵本を私はほかに知りません。
 バートンさんのお父さまはこのお話がすきで、子どもたちによく読んでくれたそうです。そのときの彼女のしあわせな気持ちが、本の中からあふれてくるようです。

この絵本を読んで:
新しい服がなによりも好きで、きれいに着飾るためなら、時間もお金も、少しもおしいとは思わない王さま。毎日、一時間ごとに服をかえるぐらいです。
ある日、とても頭のいい悪者二人が王さまの元にやってきます。自分たちは、この上なく美しい、素晴らしい模様の布を織ることができると言うのです。しかも、それは魔法の布で、この布で作った服は、役目にふさわしくない者や、ひどく愚かな者には決して見えず、賢くて、役目にふさわしい者だけが見えると言いました。

そこで王さまはこう考えます。

「それは素晴らしい。そんな魔法の布で新しい服を作らせれば、私の家来のうちで、誰がその役目にふさわしいか、誰が利口で、誰が愚かなのか、たちまちにわかる」と。

悪者の口車にまんまとはまってしまった王さま。そして、王さまをはじめ、家来の者たちも、自分のことを愚か者とか、役目にふさわしくない者だとか、思われたくないために、ありもしない物を、「素晴らしく美しい!」と、ほめるしかありません。

ついには、その二人の悪者に、機織り名人と名乗ることを許し、勲章までも授けます。

そしていよいよパレードのはじまりです。

沿道に集まった人々にも、もちろん服などは見えていないのですが、誰もそのことを口に出すことはできず、それどころか、王さまの服をほめたたえます。

そこに、ひとりの小さい子どもが、「でも、王さまは、なんにも着てないよ!!!」と言いました。そして、その子のお父さんも、「子どもは、本当のことを言いますね」と言い、それは、ひそひそと、口から口へ伝えられていきます。そして、とうとう、都じゅうの人が声をそろえて、

「でも、王さまは、なんにも着てないよ!!!」と叫びます。

王さまも、人々が言っていることは、本当のことだとわかってはいるのですが、引っ込みがつかず、裸のまま、パレードを続けていくという場面で終わります。

やくそく

作・絵/成田雅子
発行所:講談社
発行日:2004年4月

出版社からの紹介:
あなたにとっては小さな約束。でも、それはとても大きなことだった……。

ぼくとの約束、忘れないで…。猫のよもは、ゆうじさんとの釣りをたのしみにしていました。ところが、忙しいゆうじさんは戻ってきません。やがてピアノが消え、ベッドが消え、ついには…。

この絵本を読んで:
猫の名前は”よも”。”ゆうじ”さんと二人で暮らしています。一緒に釣りをしたり、歌を歌ったりして楽しく暮らしていましたが、新しい仕事に就いてからのゆうじさんはとっても忙しくなり、段々と家の様子が変わっていきます。
お気に入りのコートも着る暇がなく、ピアノを弾くのもやめてしまいます。家でご飯を食べることもなくなり、テーブルや椅子はほこりをかぶり・・・。そして、コートもピアノも、テーブルや椅子、そのものまでもなくなってしまいますが、ゆうじさんはなくなったことにも気づかない様子。
よもは忙しいゆうじさんを気遣って、「ぼくと、のんびり釣りでもしない?」と誘いますが、ゆうじさんは「また、今度ね。」と、素っ気ない返事。よもは、「約束だよ、きっとだよ」と念を押しますが、ゆうじさんは家で寝ることもなくなり、数日後、家に帰ってこなくなりました。
もう部屋には何もありません。そんな部屋で釣り竿とバケツを用意してぽつんと一人、ゆうじさんを待つよも。そのうち、家までもなくなり、とうとう何にもなくなってしまいました。

「もしかしたら、僕もなくなっちゃうのかな。」と、よもは胸がぎゅうっとなります。

そんなある日、ゆうじさんは、よもと釣りの約束をしていたことを思い出したといって、帰ってきました。すると、不思議なことに何にもない荒れ地に池がぽっかりとあらわれます。二人で糸を垂れ、のんびりと静かなときをすごしていると、荒れ地にはしだいに草が茂り、林が現れ、鳥が鳴き始めます。そして池のそばには家も現れました。
すっかり元通りになり、ほっとしたよもですが、ゆうじさんに、「明日もちゃんと帰ってくるの?」と尋ねます。「うん。」と答えるゆうじさんに、「その次もその次の日も?」と尋ねると、ゆうじさんは「きっと、おそらく・・・たぶんね。」と曖昧な返事。よもはため息をついて部屋の明かりを消し、夜は静かに更けていく、という場面で終わります。

読み終わったあと、なんとも不思議な余韻が残りました。最初は、単純にコートやピアノが消えてしまったと思っていましたが、そうではなくて、忙しいゆうじさんの心の中をわかりやすく描いているのか、あるいは、よもの心の中を表現しているのか、などと思ったりしました。いずれにしても、約束の大切さ、人と人とのきずなのあり方、などを教えてくれる絵本だと思います。

約束をした当人は軽い気持ちで言ったとしても、受け取る側がそれをどう受け取るかわかりません。なので、受け取る側の気持ちになって約束をしなければならないんだと思いました。

その後、よもとゆうじさんはどうなったのか? どうなったんでしょうね?

もぐらのねがいごと

作/ブリッタ・テッケントラップ
訳/三原 泉
発行所:BL出版

出版社からの紹介:
モグラは、毎晩ひとりで星をながめていました。あの星たちがぼくのものになったらいいのにな。すると目の前にはしごが降りてきて…。モグラは大喜びで星を自分の家に持ち帰るのですが……。モグラが手に入れられたものはなんでしょう。ドイツの絵本作家ブリッタ・テッケントラップが描くやさしい気持ちがたくさんつまった絵本です。

この絵本を読んで:
モグラは土の中で暮らしています。たくさんの部屋をトンネルでつなげた家は住み心地満点なんですが、暗い土の中にいると、寂しくなることもあります。それで、流れ星に、「世界中の星が僕のものになりますように!」と願います。
願いが叶ったモグラは、星たちで明るくなった部屋がますます好きになるんですが、何日かたつと、いつものお気に入りの石にこしかけたくなり、外に出ました。すると、空は真っ暗で何も見えません。キツネやクマ、野ネズミやシカたちは、星がなくなって悲しんでいました。
星が好きなのは自分だけじゃないことに気がついたモグラは反省し、みんなに謝ります。そして、森の仲間たちと一緒に星を空に戻し、すっかり明るくなった星空をみんなで眺めて楽しむというお話です。

お願いをした流れ星が草むらに落ちて弱っているのを見つけ、その流れ星も空に戻してあげると、また明るく輝き始めるという場面に思わず嬉しくなってしまいました。

夜が舞台の絵本ですから、暗いイメージを持ちがちですが、そんなことはなく、澄みきった夜の雰囲気が伝わってくる色合いです。また、普段目にすることのないモグラですから、主人公としてはなんだか冴えない印象がありますが、とてもかわいらしく描かれています。

いつもは寝ている時間。ときには少し夜更かしをしたり、朝早く起きて、星空を眺める。満天の星空から得られるものは大きいと思います。ゲームやスマホから目を離し、そんなひとときを味わうきっかけになる絵本になるといいですね。

まざっちゃおう

アリー・チャン/作・絵
小栗左多里/訳
発行所:フレーベル館

出版社からの紹介:
 みっつの いろは、みんな いっしょに なかよく くらしていた。 あかが 「じぶんたちが さいこう!」って いいだすまでは・・・。
 いろたちが おしえてくれる、みんなが さいこうで いられるための メッセージ!

役者あとがき:
 誰かと似ていたり、同じだったりすると「安心する」「うれしい」。じゃあ、その反対は「安心できない」でしょうか? わたしは、自分と違うものって「新鮮」「発見」「おもしろい」とよく感じます。だから、もっと知りたい。なかよくしたい。
 世界は、自分と違うもののほうが多いでしょう。違うものが混ざりあうからこそ、新しいものもうまれやすい。そう考えれば、一歩近づく勇気になるかもしれません。
 この絵本が、そんな気持ちへの助けになりますように。

この絵本を読んで:
 赤、黄色、青、それぞれ性格の違う三つの色たちが仲良く暮らしていたんですが、ある日突然、赤が「赤が最高!」と言い出します。すると、黄色は言い返し、青は知らん顔。そのため、三つの色たちは別々に住むことになります。
 でも、ある日、一人の黄色と一人の青が出会って仲良くなり、いつも一緒にいるようになります。そして、二人のあいだに緑の赤ちゃんが生まれます。
 それまで黄色と青が仲良くすることに反対していた三つの色たちは、緑の赤ちゃんがかわいくてしかたありません。そして、「もっと新しい色ができるかも?」と、まざりあい、たくさんの色たちができていきます。
 三つの色たちは、「もう別々に住む必要はないね」と言って、一緒に住むための新しい街作りをはじめます。そして、色とりどりの街ができるというお話です。

 作者がイラストレーターということもあって、白黒の背景に色が映え、デザイン画のようです。みているだけでウキウキしてきます。キャラクターもかわいいですよ。
 小さいお子さんだったら、三つの色からいろんな色が生まれる不思議さや楽しさを学べるでしょうし、少し大きくなってきたら、他人との関わり合いの大切さ、更には、人種や国境を越えた、人と人とのつながりの大切さなどを学べるかと思います。
 数十年も前のことですが、わたしの恩師があるとき、「みんなが国際結婚をするようになれば、戦争なんてなくなって、世界も平和になるのになあ」とおっしゃったことがあります。そのことがこの絵本を手に取ってすぐに、ありありと思い起こされました。

あたたかい木

作:くすのき しげのり
絵:森谷明子
発行所:佼成出版社
発行日:2008年10月30日

出版社からの内容紹介:
なぜ、この木はあたたかいのだろう。
どうして、ここにあるのだろう。
心の中まであたたかくなるのは、なぜだろう。

「あたたかい木」を見つけた若い植物学者は、あたたかい木を研究して世界中から注目される学者になった自分のすがたを思いうかべた。しかし、あたたかい木にいだかれたおだやかな時の流れの中で、若い植物学者の心は、しだいに変わっていく・・・。

作者あとがき:
 わたしがこの作品を書いたのは、今から20年ほど前のことです。
 それから現在まで、日本や海外で、多くの人たちに、直接この作品を紹介してきました。
 この作品に関心を持ってくれる人が、「あたたかい木」から思いうかべるものは、神・仏・父親・母親・家族・家庭・愛する人・親友・ふるさと・自然・大いなるもの・・・と、読む人によってちがいます。ところが、「あたたかい木」から思いうかべるものがちがっても、共通することは、そうした存在に、あたたかく受け入れられ、愛されていたという記憶があるということ、あるいは、現在、あたたかく受け入れられ、愛されているということです。
 はるかかなたの山のおくにあるという「あたたかい木」。
 しかし、わたしたちが気づきさえすれば、「あたたかい木」は、わたしたちの幸せな記憶の中にも、そして、わたしたちのまわりにも、あるのかもしれません。
 そうであるならば、わたしたち自身が、他の人にとっての大切な存在(環境)であるということを自覚したときから、わたしたちも、きっとだれかにとっての「あたたかい木」になることができるのです。
 わたしも、そして、この絵本を手にとり、こうして最後まで読んでくださったあなたも、すでに「あたたかい木のことを知っている人」なのですから。

この絵本を読んで:
 山の奥にある一本の「あたたかい木」。その周りは一年中、花や緑があって、冬の北風もあたたかく、動物たちが自然と集まってきます。
 その不思議な木を見つけた若い植物学者はその木の調査を始めるんですが、そのうちに気持ちがよくなって寝てしまいます。寝ているときには、亡き母の夢を見ます。そして目が覚めると、動物たちが自分の周りでくつろいでいっしょに寝ているんです。
 それからの何日か、動物たちと過ごしながら、「あたたかい木」のことを考えるうちに、心がおだやかにやさしくなっていきます。
 そして事あるごとに、「あたたかい木」のことを思い出し、年を重ねていき、最後には、この研究者が「あたたかい木」のような存在になるというお話です。

 内容的に、小さいお子さんには抽象的に感じるかもしれませんが、それを絵が補っているように思いました。とにかく、絵を見ているだけで、ほのぼのとしてきます。
 熊を枕にして寝ているところや、月夜にふくろうが寄り添っている姿、小動物があちこちにいるようすは、見ているだけで心が癒やされます。

おおゆき

最上一平/作
加藤休ミ/絵
発行所:鈴木出版(すずき出版)

出版社からの内容紹介:
美しい雪も時に脅威に変わります。大雪で動けなくなった車が、なんと1000台! 渋滞のまま、トイレには行けないし、おなかはすいてくるし…絶望的な気分の中、地元の温かい助けほど心強いものはないのではないでしょうか。家族の行動を見て、ゆうきたちも一生懸命にお手伝い。とんだ災難も、心に残る大晦日の思い出に変えてくれるような、雪国の家族の物語。

この絵本を読んで:
男の子の兄弟がお父さんと一緒に雪かきをしている場面で、お父さんが降る雪を仰ぎ見ながら、「明日は大晦日だっていうのに、こりゃあ、正月に帰ってくる人も大変だ」と他者を気遣います。また、翌朝一番に起きたおじいさんは、渋滞でトイレに行けない女の人が駆け込んでくると、他にも同じように困っている人たちがいることを知り、寝ている家族を起こします。そして、男の子たちに、「トイレあります」という看板を作るように言います。

公民館では村の人が集まって、おにぎりや芋煮汁を作ります。ラーメン屋さんやお饅頭屋さんはラーメンやおまんじゅうを無料で配り、お店をやっていないような人たちも役に立ちそうなものを持って、渋滞で困っている人たちのところに行きます。

家族や村の人たちのこうした行いは、昔は当たり前のように行われていたように思いますし、今でも、災害に見舞われたところには、多くのボランティアが駆けつけるということを目にします。

「困ったときはお互いさま」、と、おじいさんが言うんですが、それはきっと自分が困ったときに助けてもらった経験から相手を思いやる心が育ったんだろうと思います。

小さい子どもたちにはまだそういう経験は少ないかもしれませんが、こういった絵本を通して疑似体験をし、他者を思いやる心が育つといいなと思います。

クレヨンで描かれている雪国の風景が、なぜか温かく感じます。

もったいないばあさん

作・絵:真珠まりこ
発行所:講談社

出版社からの内容紹介:
「もったいない」って、どういう意味?
もったいないばあさんが、今日もぼくの家にやってきた。ぼくが捨てようとした物で、いろんなことをしてくれるんだ! 物を大切にする心が自然に育つベストセラー絵本。

この絵本を読んで:
この絵本には、おばあさんと男の子が登場します。そして、男の子がもったいないことをしていると、どこからともなくおばあさんが現れます。

最初は、男の子が食べ残していたり、歯磨き中に水を出しっぱなしにしているのをみて、注意をするんですが、なぜそういうことをしてはいけないのかを諭すんではなく、男の子の顔についているご飯粒をべろべろなめたり、「コップ一杯で足りるだろ~!」と叱ります。男の子は恐くなって泣き出してしまいます。

次に、男の子がまだ使える紙や色鉛筆を無駄にしようとしていると、ただ単に叱るのではなく、その活用法を教えます。みかんの皮は干して、みかん風呂にします。男の子が気持ちよさそうにお風呂に入ります。

最後には、夜暗くなって男の子が電気をつけると、もったいないといって、帰っていきます。そして、「暗くなったら、寝るだけさ」と言って寝てしまいます。

24時間営業しているお店が日常にある中で、「暗くなったら、寝る」ということを言うと滑稽に思えるかもしれませんが、それが当たり前だったのは、そんなに遠い過去のことではないように思います。また、それが本来の生き方なのかもしれません。

今の世の中はもったいないことであふれかえっているように思います。そして、それが当たり前になってしまっていて、もったいないことをしていることに気づかないことも多々あります。

あるとき、コンビニにお弁当を買いに行きました。店員さんがバーコードをなぞるとエラーが出ます。賞味期限が1時間ほど過ぎていたためです。結局そのお弁当は売ることができずに廃棄処分。もったいないことです。

そう思いながら、買い物に行くと、ついつい、棚の奥のほうの一番新しいものを取ってしまっている自分がいて、そういった行動が廃棄処分につながるんですね。反省することしきりです。

子供たちといっしょにこの絵本を読みながら、「もったいない」ことについて考え、改めていきたいですね。

この記事を書いているときに、この「もったいないばあさん」のアニメがあることを知りました。英語をはじめ、中国語、スペイン語、フランス語、ヒンディー語にも翻訳・吹き替えされています。是非、ご覧になってみてください。

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