読み:ふかいいたい
意味:あることに不眠不休で専念すること。衣服を着替えることもしないで仕事に熱中すること。
出典:『漢書』<王莽伝、第六十九上>
解説①:
この四字熟語は、
「伯父(おじ)の大将軍・王鳳(おうほう)が病(や)んだ。莽(もう)はその病床(びょうしょう)に侍(じ)し、みずから嘗(な)め試して薬をすすめ、蓬髪垢面(ほうはつこうめん)のまま、幾月(いくつき)も衣帯を解(と)くことなく看病した。」
が元となっています。
*侍(じ)する:身分の高い人、目上の人のそばにいて、その人のために働くこと。
*嘗(な)める:舌の先をやさしく軽く動かして、触れる・味わうこと。舐(な)めるとも書く。
*蓬髪垢面(ほうはつこうめん):蓬(よもぎ)という草のようなぼさぼさとした髪(かみ)の毛に、
垢(あか)だらけの顔のこと。外見を気にしない、不潔(ふけつ)で汚(きたな)い様子。
*幾(いく)~:数量が不明・不定、あるいは、多い・長いことを表す。
解説②:
この四字熟語に出てくる、王莽(おうもう)という人ですが、「新」を建国し、皇帝となった人物です。ただ、長くは続かず、15年ぐらいで「新」は滅(ほろ)びました。
前漢:紀元前202年~紀元後8年
新:紀元後8年~紀元後23年(15年間)
後漢:紀元後25年~紀元後220年
教えるときの留意点:
王莽という人は、前漢時代の元帝(皇帝)の妻(皇后)の弟・王曼(おうまん)の子どもです。
父親の王曼が早くに亡くなってしまったこともあって、不遇の時期を過ごしていましたが、伯父の看病をきっかけに出世していきます。
そして、前漢最後の皇帝から皇位を譲(ゆず)られる形で皇帝となり、「新」を建国します。
ここで問題なのは、皇帝が皇位を譲る場合、子孫や血縁者ではなく、徳のある人物に平和的に譲られる場合は、「禅譲(ぜんじょう)」と言いますが、その皇位を臣下が無理やり奪う場合は、「簒奪(さんだつ)」と言います。形式的には禅譲であっても、実際は、簒奪であったかもしれません。
そのためか、王莽の歴史的評価は分かれていて、『漢書』においてはよくありません。これは、『漢書』が後漢時代に記されたものですから、当然といえば当然なのかもしれません。一方、近年になると、王莽の評価は比較的高いようです。
いずれにしても、王莽の人物像やその背景にまで深入りせず、伯父を看病したときの様子に焦点を当て、「他人に対する思いやりの深さ」をこの四字熟語から感じ取ってもらえたらと思います。
*参考資料
・王莽(おうもう)『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%8B%E8%8E%BD
・王莽(おうもう)とは?意味や使い方『コトバンク』
https://kotobank.jp/word/%E7%8E%8B%E8%8E%BD-38896
・「前漢、新の興亡、後漢の興亡」『山川 詳説世界史図録(第5版)』p.49-50
・「王莽伝第六十九」『漢書8 列伝Ⅴ』筑摩書房、p.273-471 *ちくま学芸文庫
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