点滴穿石

読み:てんてきせんせき

意味:わずかな力でも積み重なると非常に大きな力を発揮すること。
   一滴一滴の小さな水滴も、長い間には固い石に穴をあけることができるということ。

出典:『漢書5列伝Ⅱ』<賈鄒枚路伝第二十一>*ちくま学芸文庫より

解説①:
 この四字熟語は、
「福󠄀(さいわい)の生ずるには基(はじめ)があり、禍(わざわ)いの生ずるにも胎(はじめ)があります。その基を受け、その胎を絶てば、禍はどこからくるでしょうか。泰山(たいざん)の水の霤(したたり)は石をも穿(うが)ち、井戸の釣瓶(つるべ)の索(つな)も使い尽くせば轆轤(ろくろ)の幹を断ち切ってしまいます。水は石の鑽󠄀(きり)でなく、索は木の鋸(のこぎり)ではありませんが、次第に尽き果ててそうなるのです。」
が元となっています。

 轆轤(ろくろ)と聞くと、陶磁器を作るときに使う「回転台」が頭に浮かびますが、重い物をつり上げたり引き寄せたりするときに使う「滑車」の意味もあり、中国では「滑車」のことを指すようです。ここでは、井戸の釣瓶を上下させるための滑車になります。
 幹(みき)には「もと。物事の主要な部分」という意味があり、ここでは滑車の「軸(じく)」という意味になると思います。

 泰山(たいざん)は中国山東省中部にある名山。中国五岳の一つで、古くから多様な信仰や儀式の対象となっているそうです。

解説②:
 「点滴穿石」は「点滴石を(も)穿(うが)つ」とも読みます。また、「点滴」は「雨だれ」の意味があることから、「雨垂(だ)れ、石を穿つ」とも言います。
点滴:しずく。したたり。特に雨だれ。『広辞苑』
   「しずく」とは、したたり落ちる水や液体が粒状になったもの。『明鏡国語辞典』
   「したたる」とは、水などがしずくになって落ちること。『チャレンジ小学国語辞典』
穿つ:*『デジタル大辞泉』より一部抜粋
1 穴をあける。掘る。また、突き通す。貫く。
2 押し分けて進む。通り抜けて行く。
3 人情の機微に巧みに触れる。物事の本質をうまく的確に言い表す。
4 袴・履物などを身に着ける。履く。
5 新奇で凝ったことをする。
[補説]3について、文化庁が発表した平成23年度「国語に関する世論調査」では、「うがった見方をする」を、本来の意味とされる「物事の本質を捉えた見方をする」で使う人が26.4パーセント、本来の意味ではない「疑って掛かるような見方をする」で使う人が48.2パーセントという逆転した結果が出ている。
 この四字熟語では1の意味になりますが、ただ単に「穴をあける」という意味よりも、「穴をあけて通す」という意味があるように思います。「穴+牙(きば)*鋭くとがった大きな歯」という漢字の成り立ちからイメージするといいかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました