実事求是

読み:じつじきゅうぜ

意味:事実の実証にもとづいて物事の真理を探究すること。
  「実事」はほんとうのこと・事実、「求是」はまこと・真実を求める意。

出典:『漢書』<景十三王伝第二十三>

解説①:
 この四字熟語は次のような箇所からできています。
「河間国の献王・徳(とく)は孝景帝の前二年、王位に立ち、学を修め古(いにしえ)を好み、事実にもとづいて真実を探求した。善本を民間から手に入れると、かならずわざわざ丁寧に写本してその者に与え、原本は自分のほうに引き取り、金や帛(きぬ)を加賜(かし)して善本を捜求(そうきゅう)した。」
*河間国(かかんこく):河間という国(郡)名。北京から南へ200キロほど行ったあたり。
*献王(けんおう):「献」は諡(おくりな)と言って、王などの位の高い人が亡くなったあとに与え
 られる名前。「聡明叡知(そうめいえいち):聖人が持つ四つの徳のこと)」=「献」。
*徳(とく):姓名は、劉徳。孝景帝の子どものひとり。
*孝景帝(こうけいてい):前漢時代の第6代皇帝。孝景は諡(おくりな)。中国皇帝の中で、名君
 (めいくん:善政をおこなう、すぐれた王・皇帝)のひとり。
*善本(ぜんぽん):比較的得ることの難しい貴重な本で、内容もすぐれている本のこと。献王が集め
 ていたのは、古代中国の聖人・賢人のあらわした書物(経典:けいてん)であったようです。
 注:経典(きょうてん)と読むと、仏の教えを記した書物のことになります。
*加賜(かし):「賜」は、目上の人が目下の者に物を与える、目上の人から物をもらう意。
 ここでは、写本に加えて金や帛(きぬ)を与える意。

解説②:
 前漢末期のころ、諸侯王の数は百をもって数えられたそうです。そして、その多くは、「王」という地位にあるがゆえに、おごり高ぶって人を見下し、勝手なことをし、怠けて遊興にふけって、人の道を見失っていたようです。
 そのような中で、河間の献王は、非常に気高く、きわめて正しく、ひとり際だって優れていて、他に類をみない人物だったと評価されています。

教えるときのポイント①:
 意味にもあるように、「事実の実証にもとづいて物事の真理を探究すること」の大切さももちろんですが、その前に、「学を修め、古(いにしえ)を好み」とあるように、古くから伝えられてきている良書を求め、それをもとにして、しっかり学ぶことが、より良い人になれる道であることを、この四字熟語から感じ取ってもらえたらと思います。

教えるときのポイント②:
 この四字熟語に似ているものに、「温故知新(おんこちしん)」があります。これは、『論語』<為政第二、十一>からできています。
 「子、曰(いわ)く、故(ふる)きを温(あたた)めて、新しきを知る。以(もっ)て、師為(た)る可(べ)し」
 ⇒「老先生の教え。古人の書物に習熟して、そこから現代に応用できるものを知る。そういう人こそ人々の師となる資格がある」
*「温(あたた)めて」は、「温(たず)ねて」とも読む。
 「温故知新」という箇所だけではなく、「以て、師為る可し」の部分も一緒に覚えるとより意味深い四字熟語になると思います。

参考資料:
・班固「景十三王伝第二十三」『漢書5 列伝Ⅱ』筑摩書房、p.175-202 *ちくま学芸文庫
・加地伸行「為政第二」『論語』講談社学術文庫、p.42-43


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