甫:漢検準1級

音読みは、「ホ・フ」
訓読みは、「はじーめ・はじーめて・おおーきい」
意味は、『漢字源』を参考。
 ①苗を育てる平らな畑。
 ②男性の長老。転じて、年長の男を呼ぶとき、その名につけることば。
 ③はじ―め。はじ―めて。おこりはじめ。やっと。
 ④広く平らなさま。大きいさま。

 安車蒲輪(あんしゃほりん)という四字熟語を調べていたとき、「蒲(がま)」に含まれる「甫」という漢字の成り立ちに疑問が残ったため、調べてみました。
 まず、この「甫」という漢字の一番古い字形は、次のような組み合わせだそうです。
「屮+田」
 「屮」は象形文字で、「草木の芽がでたばかりのもの」を意味します。音読みは、「テツ・ソウ」で、「艸(ソウ)、くさ」はこの漢字を二つ並べたものです。
 「田」も象形文字で、区切った耕作地の形にかたどる。田畑の意。*日本だと、田んぼ(お米を作るための水田)のイメージがあるため、成り立ちを考えるとき、その違いを理解することが大切です。
 この「屮+田」という組み合わせが、その後、
「父+用」
になり、現在の「甫」という字形になりました。
 では、なぜ、
「屮+田」⇒「父+用」
へとかわってしまったのか・・・。結局、わかりませんでしたが、想像するに、いわゆる、男性は外で働き、女性は内で働くといった社会であったことや、家族の中での「父」の立場などが背景となり、字形が似ていて「甫」の意味に合った漢字に置き換えられたのかもしれません。
 「父」は会意文字で、手に斧(おの)を持った形。男親(お父さん)という意味の他、長老、年長の男性という意味も表します。
 「用」の成り立ちについては次のように辞書によってバラバラです。
・会意。「(長方形の板)+(棒)」で、板に棒で穴をあけ通すこと。『漢字源 改訂第五版』
・象形。甬鐘(ヨウショウ)という鐘の象形。『新漢語林 第二版』
・象形。材木を組んで造った垣根(かきね)の形。『角川新字源 改訂新版』
・会意。卜(ボク、うらない)と、中(あたる、当たること)の合字。『講談社新大字典』
・象形。両端に木を樹(た)て、その中間に木を編んで犠牲を入れておく柵の形。『字統』
・象形。把手(とって)の付いた筒(つつ)や桶(おけ)の類の形。『ウィクショナリー日本語版』
 どれが正しいのか、判断に迷いますが、自分としては、最後の、「桶の類(たぐい)の形」という成り立ちが合っているような気がします。
 では、ここで改めて、「甫」の意味をみてみます。
①苗を育てる平らな畑。
②男性の長老。転じて、年長の男を呼ぶとき、その名につけることば。
③はじ―め。はじ―めて。おこりはじめ。やっと。
④広く平らなさま。大きいさま。
 ①③④は、「屮+田」の組み合わせが元となり、その後、「父+用」の組み合わせから②の意味ができた、あるいは、②の意味から「父+用」の組み合わせとなり「甫」という字形になった、ということだろうと思います。

 それから、ひとつ気になっていることを書いておきます。それは何かというと、「甫」に含まれている「点(`)」です。いろいろ調べてみましたが、それがなにかとはっきり書いてあるものを見つけることができませんでした。おそらく、「父」の上の部分のひとつだろうと思います。

*参考資料
・ウィクショナリー日本語版の「用」のページ
 https://ja.wiktionary.org/wiki/
・「中国の女性史」『フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)』
 https://ja.wikipedia.org/wiki/
・「漢字Q&A」『漢字文化資料館』
 https://kanjibunka.com/kanji-faq/jitai/q0218/

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