依
音読みは、「イ、エ」。訓読みは、「よ-る」。
『漢検漢字辞典』では、この漢字の意味を
①よる。たよる。よりかかる。「依存(イソン・イゾン)」「依頼(イライ)」
②そのまま。もとのまま。「依然(イゼン)」
③はっきりしない。ぼんやりしている。
の三つに分類しているが、よくわからなかったのは、③。
この疑問を頭に入れて、成り立ちを調べてみた。
依は、「人」+「衣」。
どちらも象形文字で、衣は、衣服の襟元(えりもと)の部分を表したもの。
『字統』によると、「依は、衣を身にかけて、霊を寄り添わせる意」とのこと。古い字形は、衣服で人を包(くる)んでいるような形なので、なるほどと思う。
亡くなった人の霊あるいは神が他の人の体に乗り移ることは、
・他人の体を借りることでもあるから、①
・乗り移った霊は以前と変わらないことから②
・外見と中身は異なることから③
というようなことなのかなあと思う。
また、③については、「はっきりとしないが、よく似ている」というふうにもとれ、「よく似ている」「彷彿(ほうふつ)とさせる」という意味の熟語もある。
なんとも不思議な感じのする漢字だが、きのうたまたまテレビで神楽(かぐら)の話題が取り上げられていて、こういった神事を自然に受け入れていることを考えると、依という漢字も違和感がなくなる。
最後に、漢検に出題されそうな熟語や類義語を整理してみる。
・依稀(イキ)
①ぼんやりとして、はっきりしないさま。
②よく似ているさま。*類義語:彷彿・髣髴(ホウフツ)、依約
・依約(イヤク)
①頼り、結びつく。
②ほのかにぼんやりと見えるさま。
③似ていること。*類義語:彷彿・髣髴(ホウフツ)、依稀
・依怙(イコ・エコ)
①頼る。頼りとなるもの。父母。*類義語:怙恃(コジ)
②[日本]一方にかたよって不公平なこと。*類義語:偏頗(ヘンパ)
・依然(イゼン)
①もとのままで変わらないさま。
②昔のことを恋い慕うさま。
③樹木が盛んに茂るさま。
*①の意味から派生し、樹木が勢いを保って元気なさまを表しているのかも?
・瞻依(センイ)
仰ぎ尊び、頼りにすること。*瞻は、見上げる意。
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