暗
この漢字は、明るい/暗い、の「くらーい」を基本義として覚え、派生的に、「そらーんじる」(書いたものを見ないですむようにすっかり覚える)という意味と読みを覚えておけば、熟語の意味はだいたい想像できる。
ただ、やはり、「?」という熟語もあるので、整理しておきたい。
・暗渠(あんきょ):水面が見えないようにふたをしたり地下に作ったりした水路。
・暗合(あんごう):思いがけなく一致すること。偶然の一致。
*暗号と間違えないように!
・暗澹(あんたん):①将来の見通しが立たず、絶望的なさま。
②くらくて恐ろしげなさま。「ーたる海の色」
・暗涙(あんるい):誰にもわからないようにこっそりと流す涙。
また、心の中で泣くこと。「ーにむせぶ」
・暗対(あんたい):何も見ないで答える。
・溶暗(ようあん):映画・演劇・テレビなどで、一つの場面が徐々に暗くなって
消えていくこと。フェードアウト。
*対義語:溶明(ようめい)=フェードイン
・暗暗裏、暗暗裡(あんあんり):誰にも気付かれずに。こっそり。「ーに事を運ぶ」
・不欺暗室(あんしつをあざむかず):人の見ていない所でも身をつつしむたとえ。
では、なぜ、「日+音」で、「くらーい」という意味になるのか?
それを理解するには、「言」と「音」の関係を知る必要があった。
二つの漢字の古い字形はほとんど同じで、
「言」は、「辛+口」
「音」は、「辛+口」の「口」の中に「一」を加えたもの。
『字統』によると、
「口」は身体の「口(くち)」ではなく、祭りのとき、神に申し上げる言葉である祝詞(のりと)などを入れる器とし、神への誓いを表すとしている。
「辛」は、体に入れ墨をするときの針のことで、
「言」は神への誓いが破られた場合、罰を受けるという約束を表しているとのこと。
そのため、「言」には、
・はっきりと、ものを言う
という意味が含まれている。
一方、
「音」というのは、神に告げ祈り、または誓ったとき、それに対する神の反応のこと。
それは、はっきりとした言葉ではないことから、
・はっきりとしない、ぼんやりとした暗示
というような意味合いを持つようである。
「はっきりしない」「ぼんやり」に「日」が添えられて、
「暗い」
となったのではないかと考える。
「音」というと、「音楽」の「音」であったり、「物音」が頭に浮かぶが、それは元の意味合いから派生したものであると理解すれば、「日+音=暗」も納得できる。
「言」と「音」は、同じような成り立ちであるならば、ではなぜ、漢字の上の部分が違っているのか?
「音」の上部は、「辛」の省略形と考えていいかと思う。一方、
「言」の上部は、「心」の変形、デザイン化、ではないかと思う。
『字統』によると、「言は心の声である、と説明してある辞書もあるが、その元となる字形を証明するものはない」とのこと。
証明するものはなくても、言の上部をよくよく眺めていると、心に見えてくる。漢字の字形を整え、その意味の区別をはっきりさせるために、変化・工夫されてきたように思えるし、音に含まれる「一」もそのためだと思う。
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