宛:常用漢字、漢検2級


宛先、宛名、~宛、というふうにはよく使うが、それ以外はけっこう難しい。それで、まずは成り立ちから調べてみた。

「宀」は、漢字の部首のひとつ「うかんむり」。音読みは「ベン」。家の屋根や、覆う、といった意味を表す象形文字。

問題なのは、宀の下にある「夗(エン)」。
右側は、「卩(セツ)」で、人が膝をついて座っている形。二画目が曲がっているが「卩」と同じとしている。
左側は、朝夕の「夕」のように見え、辞書によっては、夕方あるいは夜の意味としているものもあるが、古い字形をみていると、右側の「卩」と同じように、人が膝を曲げているような姿にみえる。

なので、「宛」は、
「人が体を曲げて、家にいる状態」というのがいくつかの辞書の共通点。その状態が、膝をついて座っている、丸まっている、体をくねらせている、というような、見方の違いから、意味が派生していっているのではないかと思う。
また、一人ではなく二人ということは、単に二人ということではなく、複数ということを表したかったんではないかと思う。
そして、字形が変化する過程で、左側は「夕」という字形に置き換わり、「卩」は、バランスをとるためか、デザイン的に、「巴」「巳」「邑」のような形にしたんではないかと思う。

以上のことを頭に入れて、「宛」の意味を『漢字源』でみてみると、

①ま―がる。かが―む。からだや姿をくねらせる。
②くねくねとまがったさま。
③あたか―も。原物の通りに姿がまがっている意から、まるで本物そっくりで、
非常によく似ていることをあらわすことば。さながら。

と、なんとなく理解できた。③の「原物」というのがよくわからず、数日あれこれ考えてみたが、結局わからなかった。ただ、『字統』によると、その姿とは、祖先の霊を拝する姿、とあり、そこから類推すると、原物=祖先の霊、神様、仏様、ということなのかなあと思う。

また、この「宛」という漢字は、日本では、
④あて。名ざし。また割り当て。
⑤ずつ(づつ)。割り当て。

という意味で使われることがほとんどかと思う。

これは、おそらく、「宛」が、家の中に人がいる状態を表しているため、その家に何かを「送る」「届ける」「配る」という意味に用いるようになったんではないかと思う。

最後に、訓読みと、音読みの熟語を整理してみる。

・宛も→あたかも *まるで。さながら。
・宛ら→さながら *まるで。ちょうど。あたかも。
・宛→ずつ *同じ数を割り当てる・繰り返すこと。「一人二個ずつ」「少しずつ」
・宛がう・宛行う→あてがう *与える側が一方的に割り当てること。

その他、『漢字源』には、次のような訓もあった。
・宛がる→まがる
・宛む→かがむ

音読みは「エン」で、熟語は、

・宛然(エンゼン):そっくりそのまま。まさにそのもの自身であるさま。
・宛転(エンテン):①ゆるやかな曲線を描くさま。特に、眉が美しく弧を描いている
さま。
②話などがよどみなく進むさま。
・宛丘(エンキュウ):中央の部分が小高くなった丘。
・宛虹(エンコウ):①虹のこと。②竜の別名。

なかでも、
「宛転」は、顔かたちの美しいさま、という意味に用いられるため、要注意!
「宛虹」が竜の別名であるというのは、虹は古くは天界に住む竜の形をした獣と考えられていた、ということを思い出すこと!

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