葦・蘆・葭

葦・蘆・葭

この3つの漢字は、どれも、「あし、よし」というイネ科の植物のこと。

*「あし」という名前は「悪(あ)し」に通じることから、それをきらって、「善(よ)し」と言い換えたもの。

この「あし、よし」という植物には、成長の段階で異なる漢字が当てられている。

葭:春、芽吹いて、これから大きくなろうとしている若いとき。

蘆:夏、勢いよく伸び、大きく育ったとき。

葦:秋、蘆に穂ができたとき。

まず、「葭」について。

「叚(カ)」は、『新漢語林』によると、左側の部分は「厂+二」で、「厂」は崖(がけ)を表し、「二」は未加工の玉(*宝石の原石)を表す、としている。そして、右側の部分は両手の象形。

岩石でできた崖から取り出したばかりの未加工の玉の意味から、「かり」の意味を表す。瑕(きず)の原字。

とのこと。

『字統』では、それが鉱物の場合は「段」、玉の場合は「叚」であるとしていて、『新大字典』には、「叚」は「段」の誤字との記述もあった。

いずれにしても、「叚」「段」は、ある「物」の段階・区切りを表し、「叚」について言えば、その段階が初期で、

という漢字が生まれたのだと思う。

次に、「蘆」について。

「盧(ロ)」の、いくつかある意味のひとつに、

・めしびつ(炊き上がったご飯を釜から移し入れておく器)

がある。

「盧」は、「虍󠄀+田+皿」。

「田」は、田や畑の「田」と思いがちだが、ここでは、「胃」の省略形。胃袋の中にある食べ物を表している。

「皿」は食べ物を盛る器のこと。

「虍󠄀」は虎の上の部分で、『字統』によると、虎の頭を表しているとのこと。

古代中国では、畏敬・崇拝の対象に虎がいて、神聖なものとして、虎が描かれていたり、あるいは刻まれている。

また、夏に大きく育った「あし、よし」が繁茂(はんも)している河川や湖沼などの水辺には魚や鳥などの動物が集まり、それを狙う虎がいたようで、そういった背景もあって、「あし、よし」に、「盧」が当てられたのではないかと思う。

この「盧」に草冠を付けた「蘆」という漢字をよく目にすることはないと思うが、簡略化した、

は、「芦田(あしだ)」という人名や、「芦屋(あしや)」といった地名などで目にする。

蘆 ⇒ 芦

では、なぜ、「盧」を「戸」に置き換えたのか? 調べていくうちに、面白いことがわかった。

中国の神話に出てくる二人の神が、行いの悪い鬼(死者の霊?)を「あし、よし」で作った縄でしばり、虎に食べさせる、という。

そんな言い伝えからか、二人の神や虎の絵を門戸に描き、「あし、よし」で作った縄を門戸にかけるという、魔除けの風習があるとのこと。

そういうことを踏まえると、ただ単純に「盧」を「戸」に置き換えたんではないんじゃないかと思う。

いずれにしても、「あし、よし」という植物を表す漢字に、なぜ「虎」が含まれているのか納得できた。

最後に、「葦」について。

前回、「韋」について、調べたとき、「韋」には、

④取り囲む。めぐらす。まわりにめぐらした囲い。

という意味があった。

「あし、よし」という植物は、イネ科の植物ではあるが、稲との大きな違いは、多年草であり、地下で根を横に伸ばしていって、辺りを取り囲むかのような大群落をつくる、という性質があるということ。

それで、この「葦」という漢字が生まれたように思う。

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