阿:漢検準1級

熟語ではよく見る漢字だけど、改めて「阿」だけ見ると、はて?どんな意味なのか・・・。

主な意味としては、
①川や山などの曲がったところ。隈(くま)。
②人の機嫌をとって気に入られようとする。おもねる。へつらう。
③寄りかかる。
④軒(のき)。ひさし。
⑤親しみを込めて呼ぶときにつける接頭語。
⑥梵語(ぼんご)や外国語の音訳に用いる。

訓読みは、意味に対応して、
①くま。
②おもねる(阿る)。*へつらうは、「諂う」。
と読む他、文脈によっては、③よる(阿る)と読んだり、④ひさし、
と読むこともあるようだ。

漢検1級対策として注意しておきたい熟語は、
・阿嬌(アキョウ):美しい女性。美人。
・阿僧祇(アソウギ):数えきれないほどの大きな数。
・阿堵物(アトブツ):銭(ぜに)、お金のこと。
・阿漕(アコギ):ひどいことやずうずうしいことを平気でするようす。
欲が深く思いやりがないようす。

阿嬌の「嬌」は、「なまめかしい、なよなよとしてかわいらしい」という意味合いで、「阿」も①の意味にある「曲がった」という意味から「しなやか」という意味に派生して、この熟語が作られたようだ。

阿僧祇は、古代インドのサンスクリット語(梵語)の「asamkhya」(*mの下に・有)の音訳。

阿堵物は、銭の異名・俗語で、おもしろい故事あり。以下、一部引用;

「阿堵」は、「これ」「あの」などを意味し、「阿堵物」は、直接その物の名をいうのをはばかって、「あんなもの」「こんなもの」の意で用いられた。
王衍(おうえん)は性高雅で、妻の貪欲(どんよく)なのを憎み、かつて銭の字を口にしたことがなかった。そこで妻は夫を試そうと、下女に命じて、夫の寝室に銭をまき散らさせておいたが、朝目覚めた王衍は銭を見るや、下女をよんで「阿堵物をかたづけろ」と命じた、とある。『世説(せせつ)新語』(宋の劉義慶(りゅうぎけい)編)「規筬(きしん)」上編より。出典:『小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)』

阿漕は、三重県津市の海岸「阿漕浦海岸」という地名から。伊勢の神宮に供える魚をとるための禁漁地であったが、ある漁夫がたびたび密漁を行なって捕えられたという伝説がある。なお、津市の民話では、この漁師は病気の母親を助けたい一心で、厳罰を覚悟の上、密漁を繰り返し、とうとう捕まってしまって、生きたまま海に沈められたという、悲しくも、親孝行な息子の話となっている。

阿は、「こざとへん+可」。「こざとへん」とよく似ている漢字に「おおざと」があるが、こざとへんは「阜」、おおざとは「邑」が元となっている。
こざとへん(阜)は、積み上げた土の山、というような意味で覚えていたが、神様が天と地を昇ったり降りたりする「階段」という意味のほうが納得できる。
おおざと(邑)は漢字の右側にあり、村や都、国といった、人の集まるところ。

可は辞書によって成り立ちが異なり、どれが正解なのかよくわからないが、共通しているのは、「声を出す、その声を聞く」ということだろうか。神が発することから、「良し、許す、可能」であったり、その否定形にも用いられる。

以上のようなことを整理して「阿」という漢字の意味合いを考えてみると、神様が降り立つところは人の目に触れにくいところであったり入り組んでいるところであることから、隈(くま)という意味となり、その場所で、神が発することに対する態度の表れとして、おもねるなどの意味が生まれたのかもしれない。

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