「楽(樂)」について

 四字熟語「曲肱之楽」の「楽」について調べました。

 まず、読み方ですが、常用の音読みは「ガク、ラク」、常用の訓読みは「たのーしい、たのーしむ」です。

 意味は大まかに三つに分かれます。
①楽器。音楽。音楽を演奏する。演奏者。
②たのーしむ。たのーしい。やすらか(安らか)。やわらぐ(和らぐ)。
③このむ(好む)。愛する。のぞむ(望む)。ねがう(願う)。

 「楽」は教育用漢字で、旧字「樂」の省略形です。そのため、成り立ちの説明では旧字が元になります。
 「樂」を単純に分けると、
「幺」+「白」+「幺」+「木」
のようになりそうですが、わたしが調べた限りでは、このように分けて説明している辞典はありませんでした。
 これは、「樂」の成り立ちが諸説あって、はっきりしないためだと思います。
 ひとつ言えることは、「樂」に含まれる「白」は色の種類「しろ」ではないという点です。また、「幺」についても意見が分かれているようです。 

 では、その問題となる成り立ちの諸説を箇条書きにして整理してみます。
ア)木の上に繭(まゆ)がかかった様子を描いた形で、櫟(くぬぎ)という木を表わす。
  *ヤママユ(山繭)は蛾(ガ)の一種で、幼虫のときはブナ科の葉を好んで食べ、
   その木に繭を作る。櫟はブナ科の植物。
イ)ドングリをつけた櫟(くぬぎ)。
ウ)木に弦(ゲン)を張った楽器。*幺=弦。
エ)楽の「白」は親指の形で、楽器を弾いている様子。
オ)木の柄のある手鈴の形。
カ)台に太鼓が載っている形。
 これらの説の元となっている字形を古い順に二つみてみます。

 アは『漢字源 改訂第五版』の説で、わたしはこの説に納得しています。
 最初の古い字形にはドングリが描かれていませんが、時代が進み、よりわかりやすくするために真ん中にドングリを加えたのではないかと思います。
 なお、当時はドングリの実ができる木=ブナ科の植物のことを指していたと思います。

 普通に考えると、ウの「木に弦(ゲン)を張った楽器」と解釈し、楽器=音楽=楽しい、と解釈したほうがわかりやすいと思われますが、ではなぜ、ブナ科の植物が①~③のような意味に関係があるのでしょうか。あれこれ調べる中で、その理由として次のようなことを思いつきました。いつものわたしの勝手な推論で、こじつけのような気もしますが・・・<苦笑>。

・ブナ科の植物は焚き火をするときに使う薪(たきぎ、まき)に適している。
・乾燥させた薪同士を打ちつけると「カーン」と乾いた高い音がする。
・薪を燃やしたときの「パチパチ」という音のリズムにはリラックス効果がある。

 以上の三つの点から①と②の意味が「樂」という漢字に当てられたのだと考えました。

 ③の「好む、愛する」という意味は「たのしむ」という意味から派生したものだと思いますが、「ねがう、のぞむ」という意味はブナ科の植物のまた違った特徴から生じた意味だと思います。その特徴ですが、ドングリの実は豊作と凶作を繰り返すのだそうです。そのため、仮にドングリを食料にしていた場合、豊作を願う気持ちが表れているように思います。

 「樂」を含む漢字に、
「礫」「轢󠄀」「鑠󠄀」「皪」「擽󠄀」「藥」
といった漢字があります。
 「礫」は小さい石ころのことですが、これは「樂」をドングリとして見ているのだと思います。
 「轢󠄀」には「車で人をひいて(轢いて)死亡させる、踏みつけて荒らす=人の気持ち・体面・名誉などをひどく傷つける」というような意味がありますが、これはブナ科の樫の木などの堅い木が車輪の材料として用いられたことからのように思います。
 「鑠󠄀」と「皪」については「樂」を薪(たきぎ、まき)と見て、「鑠󠄀」は熱せられて金属をも溶かすという意味として作られ、「皪」は白く光り輝く、明るいといった意味として作られた漢字のように思います。
 「擽」は日本では「くすぐる(擽る)」という意味に当てられた漢字で、「樂」は楽しい意味として用いられていると思いますが、中国語では「擽」は打つ、たたく、という意味ですので、「樂」は堅い木という意味合いで組み合わされているように思います。
 最後に、「藥」ですが、これは「樂」の意味の②にある「安らか、和らぐ」という意味に「艹󠄀(草)」を組み合わせて「くすり」という意味に当てられたように思います。

 以上、かなりこじつけのようにも思いますが<苦笑>、備忘録として残しておきます。

*参考資料
『「楽」のはなし:かんじのはなし』yumemivision
https://yumemivision.blog.jp/archives/11125006.html
『「疒 に 樂」(ラク)のはなし:かんじのはなし』yumemivision
https://yumemivision.blog.jp/archives/11165975.html
『「薬」(藥)のはなし 改』yumemivision
https://yumemivision.blog.jp/archives/11161135.html
『焚き火の音がつくりだす言葉の要らないコミュニケーション』日本焚き火コミュニケーション協会
https://jmtf.jp/takibi-communication/oto-communication/
『薪ストーブで薪を楽しむ|薪ストーブの教科書』薪ストーブ製作工房 信州エイトノット
https://wood-stove.jp/firewood/
『どんぐりの木の種類ガイド:見分け方から薪としての魅力まで徹底解説|薪の情報室』株式会社ワークフェア、三島市の障がい者就労支援事業所
https://www.workfair.co.jp/blog/201
『焚き火の癒し効果とは?科学が証明するリラックスの秘密と焚き火動画の魅力|薪の情報室』株式会社ワークフェア、三島市の障がい者就労支援事業所
https://www.workfair.co.jp/blog/91
『中国詩と車』中島達夫、中日本自動車短期大学論叢第12号、1982
https://nakanihon.ac.jp/wp-content/themes/nac/doc/college/ronso/nac_ronso_012-09.pdf
『Wikipediaー車輪ー』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8A%E8%BC%AA
『Wikipediaーブナ科ー』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%8A%E7%A7%91

 

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