読み:せつもんきんし
意味:すべての事を身近な問題として切実に取りあげ、自分のこととして考えること。
出典:『論語』<子張第十九>
解説①:
この四字熟語は以下の文中から作られています。加地伸行氏『論語』からの引用です。
”子夏曰(いわ)く、博(ひろ)く学んで篤(あつ)く志(こころざ)し、切(せつ)に問(と)うて近く思う。仁(じん) その中に在(あ)り。”
*現代語訳
”子夏のことば。知識を広めて十分に記憶し、[発憤して]問題を立てては、自分の分からないことを解こうとする。[われわれが目的とする]人の道(仁)はその中に在る。”
子夏(しか)は孔子の弟子の一人で、特に文学に優(すぐ)れていたそうです。
この文中からは「博学篤志(はくがくとくし)」という四字熟語も作られました。
孔子が唱(とな)える”仁”を自分に備えるためには「博学」「篤志」「切問」「近思」の四つをすべて心がけ、実践することが大切であるということを言っているのだと思います。
では、その”仁”とは一体なんなんだろうか?と考えてしまいますが、正直なところ的確に説明できません。しかし、子どもたちも同じような疑問を持つと思いますので、とりあえず、いくつかの解説を挙げておきます。
・思いやり。いつくしみ。なさけ。特に、儒教における最高徳目で、他人と親しみ、思いやりの心をもって共生を実現しようとする実践倫理。 『小学館デジタル大辞泉』
・「愛情深い」「親切な」などの意であろう。孔子は仁をもって最高の道徳、日常生活に遠いものではないが、容易に到達できぬものと考えた。
・具体的な心構えとしては、「己れの欲せざるところ、これを人に施すなかれ」というのがもっともわかりやすい。つまり思いやりの心で万人を愛するとともに、利己的欲望を抑え礼儀を履行すること。ただし万人を愛するといっても、出発点は肉親への愛にある。
『小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)』
・天から人間に与えられた人間の本性の働きで、たんなる情念ではなく、知と勇とをかねそなえ、克己復礼、孝悌、敬、忠恕、愛などに表現され、また制度としての礼の中にも具体化されるとした。
『精選版 日本国語大辞典』
・仁という愛では他人との身分的境界が常に意識され,礼という公の規準が先行している。したがって,普遍的な人間愛 Humanismや仏教の平等愛である慈悲などとは違う。
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』
*上記の解説はすべて『コトバンク』から抜粋、引用しています。
解説②:
では、「切問近思」はどのように解釈されているのかをみてみたいと思います。
・十分に理解できないことを熱心に究めて探り、高遠な道理を考えず身近な問題に当てて考えること。
『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂
・理想を追求して一心不乱になり、疑問が生じたら切実に師友の教えを求め、すべてを自分の実践上の事として工夫する。『論語 現代語訳』下村湖人、PHP研究所
・学んでもまだ悟ることのできないことは、切実に問うて十分に理解を深めるようにし、しかも心を高遠なことに馳せないようにして、身近な実際問題に当てて思案工夫する。『論語』新釈漢文大系
そして、このページの最初に載せています『漢検四字熟語辞典 第二版』の意味を確認します。
・すべての事を身近な問題として切実に取りあげ、自分のこととして考えること。
上記の解釈の中で、わたしはこの解釈が一番気に入っています。
身近なところでは家族や友だち、住んでいる町や学校での出来事から、日本を含めた世界での様々な問題を他人事としないで、自分のこととして考え、思いを寄せるということだろうと思います。
解説③
「切問近思」のそれぞれの漢字ですが、「思」は出直し!漢字学習のコーナー”「思」と「考」”を参照してください。また、「近」は出直し!漢字学習のコーナーで解説しますので、そちらをご覧ください。
ここでは「切」と「問」について説明します。
まず、「切」についてです。成り立ちは、
「切」=「七」+「刀」
という理解でいいと思います。「七」は漢数字の「なな、しち、7」ですが、元は縦線あるいは横線を”切る”さまを描いて「7」という数を表わしました。
「七」は「切」の原字とされていますが、「七」は数の「7」として使われたため、「七」に「刀(刀)」を加えて、「切る」という意味を表わす漢字ができたのだと思います。
では、「切」の主な意味を確認します。
①き-る。き-れる(きる)。
②さく(割く)。きざむ(刻む)。
③さしせまる(差し迫る)。あわただしい(慌ただしい)。
④程度の深刻さをあらわす。
・ふかく。しき-りに(頻りに、物事が何度も続いて起きるさま)。
・きびしい。「痛切(つうせつ)」
・ぴったり。「適切(てきせつ)」
⑤すべて。「一切(いっさい)」
「切に問う」の場合、③④の意味が含まれているように思います。
なお、「七」の詳しい解説は、出直し!漢字学習コーナーの「漢数字:一から九までの成り立ちについて」を参照してください。
次に「問」についてです。まず意味を確認しますが、今回は『漢字源 改訂第五版』を参考にしました。
①と―う。たずねる。といただす。
②と―(い)。といただすこと。また、その内容。
③と―う。人をたずねる。
④と―う。責任や罪をといただす。
⑤相手のようすをたずねる手紙。また、指示を書きよこすこと。
5つに分けられていますが、基本的に「問う、質問する」という理解でいいと思います。
次に成り立ちですが、
「問」=「門」+「口」
家などの建物を取り囲んでいる塀や壁に、通行のために開けられた出入り口のことを「門」と言いますが、それに「口(くち)」を合わせて、上記のような意味になっています。
仮にその門を家の門とすると、門のところで声をかけるというような場面が想像されますが、それだとどうも腑に落ちません。
いろいろ調べていたところ、白川静氏の『字統』にその門は廟門(びょうもん)のことかもしれないという記述がありました。そして、『Wikipediaー廟ー』に次のような説明がありました。
”中国において廟とは祖先の霊を祀(まつ)る場であるが、墓所は別に存在する。その為、仏教における仏壇(ぶつだん)のような位置づけであるが、仏壇とは違い母屋(おもや)の中には無く、霊廟(れいびょう)専用の別棟(べつむね)がある。祖先を篤(あつ)く敬う中国では、古代から家中で最も重要な場所とされていた。また、孔子を祀る廟や関羽(かんう)を祀る廟が各地に多数存在するように祖先の霊だけではなく民衆が敬愛する英雄や古くから信仰される神祇(じんぎ、天と地の神々のこと)の廟を建立(こんりゅう)して祀っている事もある。”
門を廟門と考えると、ご先祖さまにお参りするだけでなく、信仰の対象となっている神さまをお祀りする中で、相談事や心配事などについて尋ねたりしていたと考えることもできると思いました。
以上です。
*参考資料
『コトバンクー仁ー』
https://kotobank.jp/word/%E4%BB%81-81299
『Wikipediaー廟ー』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BB%9F

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