四字熟語「歳寒松柏」の「歳」について調べてみました。
まず読み方ですが、音読みは「サイ・セイ」、訓読みは「とし」です。
「セイって発音する言葉って何だっけ?」と一瞬考えてしまいましたが、「あぁ、お歳暮かぁ」と、すっきり<笑>。
次に意味の確認ですが、今回は『角川新字源 改訂新版』です。成り立ちを理解する上でとても参考になりました。
①みのり。その年の収穫。また、豊作。
②とし。
㋐年。一か年。
㋑つきひ。時の流れ。
㋒よわい(よはひ)。年齢。
㋓人の一生。一生涯。
㋔世。時代。
③星の名。木星。木星の軌道を十二次に分け、その一次をめぐるあいだを一歳という。「歳星」
では、ここから成り立ちについてみていきますが、今回の解説もわたしの勝手な推論の部分が多いため、最後に各辞典類の解説も付すことにします。
まず、歳の組み合わせですが、旧字体が元になります。
歲󠄀
そして、この組み合わせについては解釈が二つに分かれているようです。
a.戉(エツ、まさかり)+步󠄀(ホ・ブ・フ、あるーく)
b.戌(シュツ・ジュツ、いぬ)+步󠄀
「步󠄀」は「歩(ある)く」の旧字体です。書くときにバランスがとりにくいからでしょうか、新字体への変更のときに「丶󠄀」が加えられました。
一般的に旧字体から新字体への変更が検討されるときは、画数は少なくなりますが、この「步󠄀」は例外だったようです。書いてみると確かに書きにくいです。
ちょっと話がそれました。
説明の都合上、bから先に解説します。
bは「步󠄀」を上下に分けて「戌」に書き入れると、確かにそのまま「歲󠄀」になります。
「戌」は訓読みにもあるように、十二支(じゅうにし、12種類の動物)の中の「犬(いぬ)」に当てられた漢字ですが、元々は「小さい戉󠄀(エツ、まさかり)」を象(かたど)ったものだったようです。*『角川新字源 改訂新版』による。
一方、aの「戉」は大きく広い刃の武器でイラストのようなものだと思ってください。

合わせて、「戉」の一番古い(と思われる)字形をみてみます。

そして、次に示す字形は「戌」の一番古い(と思われる)字形です。

そして「歲󠄀」の一番古い(と思われる)字形が

です。以上の三つの字形を見るかぎりでは、ほぼ同じように見えます。つまり「歲󠄀」は元々「まさかり」の形でその意味を表わそうとしたのかもしれません。しかし、それだと「まさかり」を表わす「戉」「戌」と混同してしまうため、「步󠄀」を加えたのだと思います。それが次の二つの古い字形です。


最初の字形は点か何かだと思いますが、なんなのかはっきりしません。当時の人たちもそうだったんでしょう。そのため、左右の足の形にしてわかりやすくしたのだと思います。
では「歲󠄀」の組み合わせは「a」か「b」かですが、元々は「a」だったと思います。なぜかというと、「戉」は大きな刃が特徴的な古代の武器ですが、その大きさからでしょうか、権威の象徴でもあり、儀式や祭祀、刑具にも用いられていたからです。
権力の象徴としての「戉」は王や皇帝といったその時代の権力者に与えられたものであることから、「戉=時代」という見方も生じたのではないでしょうか。また、世代交代の点から見ると、「戉=一生、生涯」という捉え方もできると思います。
ここで、改めて、「歲󠄀」の意味を確認すると、
①みのり。その年の収穫。また、豊作。
②とし。
㋐年。一か年。
㋑つきひ。時の流れ。
㋒よわい(よはひ)。年齢。
㋓人の一生。一生涯。
㋔世。時代。
③星の名。木星。木星の軌道を十二次に分け、その一次をめぐるあいだを一歳という。「歳星」
この①~③の中では、②の㋔が元々の意味だったと考えられます。そして、㋓・㋒・㋑・㋐というふうに意味が派生し、更に①や③の意味にも用いられるようになったのだと思います。
一方、武器としての戉も時代とともに実用化されていったようで、武器としての戉は「金」が加えられて「鉞」となり、時代をも象徴する戉には步󠄀(左右の足あと=止)が加えられて「歲󠄀」となったのではないかと考えています。
最後になりましたが、以下にいくつかの辞書の解説を付して、「歲󠄀」についてを終わります。
『漢字源 改訂第五版』
会意。「戉エツ(刃物)+歩(としのあゆみ)」で手鎌の刃で作物の穂を刈りとるまでの時間の流れを示す。太古には種まきから収穫までの期間をあらわし、のち一年の意となった。
『新漢語林 第二版』
形声。步+戌。步は、あゆむの意味。音符の戌(シュツ)は、まさかりの象形。まさかりでいけにえを裂いて一年ごとに祭る儀式から、みのり・としの意味を表す。步は、一年が終わって次の年へと歩むの意味から付された。
『角川新字源 改訂新版』
旧字は、形声。意符步ほ(めぐり)と、音符戌シユツ→サイとから成る。収穫から収穫までのめぐり、ひいて、一年の意を表す。
『常用字解』白川静
会意。古い字形では戉(鉞[まさかり])の形。のち戉の刃部に止(足あとの形)を上下にかき、今の字形では上部の止と下部の少の形がそれである。したがって今の字形は、戉と歩(步󠄀。止と少とを組み合わせた形)とを組み合わせた。歳はもと戉(鉞)で肉を切って祭る祭祀(祭り)の名で、おそらくその祭祀が年一回行われたので、その祭祀をもって年を数えたのであろう。
*参考資料
『悠久の美―中国国家博物館名品展』東京国立博物館
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=546
『日本大百科全書(ニッポニカ)サンプルページー玉器ー』
https://japanknowledge.com/contents/nipponica/sample_koumoku.html?entryid=3004
『コトバンクー鉞ー』
https://kotobank.jp/word/%E9%89%9E-36744#goog_rewarded
『レファレンス協同データベースー步󠄀ー』
https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?page=ref_view&id=1000107304
『Wikipediaー斧ー:中国』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%A7

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