四字熟語「克己復礼」の「克」について調べました。
まず、意味の確認です。今回は『漢字源 改訂第五版』を参考にしました。
①か―つ。がんばって耐え抜く。やりぬく。
②か―つ。力を尽くして、かち抜く。
③よ―く。耐えぬいて~できる。苦労して~し終える。
④かち気な。
「克」は音読みで「コク」、訓読みは意味にあるように「かーつ」「よーく」と読みます。
「勝つ」も同じような意味に思えるかもしれませんが、「勝つ」は「相手に勝つ、相手を負かす」という場合に使われます。一方、「克つ」は「自分自身」が対象になります。
次に成り立ちですが、不明な点が多いためか、諸説あって、はっきりとしたことはわかりませんでした。
そこで、まず先に諸説を紹介したあと、わたしなりにいろいろと調べ、考えたことをもとにした、いつものわたしの勝手な推論を最後に記したいと思います。
では、諸説を紹介します。
『漢字源 改訂第五版』
会意。上部は重い頭、またはかぶとで、下に人体の形を添えたもので、人が重さに耐えてがんばるさまを示す。がんばって耐え抜く意から、かつ意となる。緊張してがんばる意を含む。
『新漢語林 第二版』
象形。甲骨文・金文でわかるように、重いかぶとを身に着けた人の形にかたどり、重さに耐える、うちかつの意味を表す。
『角川新字源 改訂新版』
象形。人が甲冑(かっちゅう)を着けた形にかたどり、甲冑の重さに耐える、ひいて「かつ」意を表す。
『常用字解』白川静
象形。把手(とって)のついている彫刻刀の形。上部に把手があり、下部は曲がっている刃の形。
『Wiktionaryー克ー』
不詳。複数の説が存在するが定説はない。
上記の解説を頭に入れて、「克」の一番古い(と思われる)字形のひとつをみてみます。
*『漢字源流|中華語文知識庫』より。

どうでしょうか。わたしはどうしてもイメージが湧きません。
そこで、『漢字源流|中華語文知識庫』の「克」の解説(中国語)をDeepLで翻訳したところ上記解説とは異なる解説で、わたしはこの解説にヒントがあるように思えました。
”克は獣の皮の形を象る。皮に従う。上部は剥ぎ取る様子を示す。”
「皮に従う」とありましたので、「皮」の一番古い(と思われる)字形を見てみました。

右上の字形は「手」を表わしているようで、手で獣の皮を剥いでいる様子とのことです。左側の字形は「克」によく似ています。
しかし、これだけでは獣の皮というイメージが湧きません。そこで更に今度は「革」の一番古い(と思われる)字形を見てみました。*『Wiktionaryー克ー』より。

この「革」の字形と「克」の字形を比べてみると、「克」は皮を剥いだ、あるいは剥いでいる状態のようにも思えてきました。
ではなぜ、各辞典の解説に「かぶと」や「甲冑(かっちゅう)」が出てくるのか、疑問に思いました。そこで、古代中国におけるかぶとや甲冑について調べたところ意外なことがわかりました。
”古代中国の神話では、甲冑も刀剣と同じく、怪神・蚩尤(しゆう)が発明した物だと言われており、動物の皮を割いて鎧のような防護服を作っていたそうです。実際に商(殷・紀元前1600~紀元前1046年)には、皮を使って盾や兜、胴まわりの防護服が作られていて、中国最初期の甲冑は皮革製だったことが分かっています。”*『中国甲冑の歴史』より引用。
このことから「克」は、
動物の皮を利用して作られた防護服
ではないかと考えました。
刀剣が攻撃用とすると、「かぶと」「甲冑」は防御用になります。かぶとや甲冑を身につけて相手からの攻撃に耐える。そして、「克つ」。そういうイメージへと発展した漢字のように思います。
*参考資料
『中国甲冑の歴史』刀剣ワールド
https://www.touken-world.jp/tips/7479/
『「克」のはなし|かんじのはなし』yumemivision *2023年4月23日付
https://yumemivision.blog.jp/archives/2023-04.html?p=2

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