四字熟語「割鶏牛刀」の「鶏」について調べてみました。
「鶏」は音読みで「ケイ」、訓読みで「にわとり、とり」と読みます。

文字で説明するより、イラストのほうがわかりやすいですね。
では次に成り立ちについて説明します。
「鶏」の右側は「鳥」で、いわゆる「とり」を象ったものですから、特に説明の必要はないかと思います。ちなみに、次の字形が一番古い(と思われる)甲骨文字のひとつです。『漢字源流|中華語文知識庫』からお借りしました。

問題なのは、左側です。
鶏
左側は略字で、元の字形は
奚
です。『漢字源 改訂第五版』によると、これを
「爪」+「糸」+「大」
としています。そして「爪(つめ)」=「手」、「糸(いと)」=「ひも(紐)」、「大(ダイ)」=「人」というふうにみています。この解説を頭に入れて、「奚」の一番古い(と思われる)字形を二つみてみます。*『漢字源流|中華語文知識庫』より。


これは、頭の部分に「糸=縄(なわ)」が描かれ、人を縄でつないでいる様子から、奴隷(どれい)や召使い(めしつかい)という意味を表わしているそうです。
一方、白川静氏の『字統』では、「奚」は、「頭上に髪を編みあげた女子を牽(ひ)く形」としています。
また、その解説の中で、
・頭に物を載せている姿
・中国の西北辺境に住んでいた遊牧民・羌(きょう)の姿
*辮髪(べんぱつ)といって髪の毛を伸ばして編んだ髪型
という説も紹介されています。
どの説が正しいのかはわかりませんが、いずれにしても、奴隷や召使いを象ったものと言えると思います。
話は「にわとり」に戻ります。
「にわとり」は家禽(かきん)といって、「肉や卵、羽毛などを利用する目的で長い年月にわたって飼育されている鳥」の一種です。鳥籠(とりかご)に入れて飼う鳥とは区別され、飛ぶ力が衰えたにわとりは放し飼いにされていたと思います。その様子が、奴隷や召使いという意味の漢字「奚」で表現されているように思います。
なお、これはわたしの勝手な推測ですが、


どちらも頭の部分に特徴があり、その点も考え合わせて「鶏」という漢字が作られたとすると、よく考えられた字形だなあと感心します。
また、
「鶏」の左側は「奚」の略字で、「爪(爫)+夫」という組み合わせになると思いますが、わたしが調べた限りでは単漢字としてはないようです。
一方、「爪(爫)+女」で「妥(ダ、おだーやか)」という漢字があります。訓読みにもあるように「穏やか、安らか」というような意味の漢字です。日本では「お互い譲(ゆず)り合って穏やかに話をまとめる=妥協(だきょう)」という意味の熟語が思い浮かぶかと思います。
それが「爪(爫)+夫」になると「奴隷、召使い」・・・。
なんとも意味深な略字ではあります<苦笑>。
*参考資料
『字統 普及版』白川静、平凡社
『漢字源流|中華語文知識庫』<鳥>
https://www.chinese-linguipedia.org/search_source_inner.html?word=%E9%B3%A5
『漢字源流|中華語文知識庫』<奚>
https://www.chinese-linguipedia.org/search_source_inner.html?word=%E5%A5%9A
『コトバンクー羌』
https://kotobank.jp/word/%E7%BE%8C-52356#goog_rewarded

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