あたらしいお金の教科書-ありがとうをはこぶお金、やさしさがめぐる社会

著者:新井和宏
発行所:山川出版社
発行年月:2021年7月(第1版第1刷)

出版社からの内容紹介:
小学生から学ぶ、これからのお金の教科書。
自分らしく生きるには?
ワクワクしながら働くには?
やさしい社会をつくるには?
これからの時代に合った生き方をはぐくむために大切なお金の話をしよう。

随感随筆:
 コロナ禍も落ち着きをみせ、日常を取り戻したかのように思える一方、世界のあちこちで起きている戦争や紛争、飢餓や貧困等々、問題は絶えません。
 また、一見平和にみえる日本ですが、毎日のように取り上げられる凶悪事件のニュースをみていると、とても平和な国とは思えず、あちらこちらにしわ寄せ・歪みが生じているように思います。
 小学生にまで及んでいる自殺、子ども食堂という形で表れている貧困など、未来ある子どもたちの希望を奪ってしまっている社会は決して平和とは思えませんが、政治や経済の話題の中でそういった問題の解決の糸口は見えません。

 そういった問題を解決するにはどうすればいいんだろうと、つらつら考えている中で、この本が目に止まりました。
 この本は「お金」という身近なものをテーマにし、社会の中でお金をどう扱うかや、お金をどう活かしていくかを具体的に説明されていて、それがひいては「どう生きていくか」、そして、わたしたちが他者と共存していくためには、社会がどうあるべきか、というところにまで及んでいます。
 小学生から学ぶ・・・、とありますが、大人にも読んでもらいたい本ですし、特に、進学や就職、そしてその先にある将来のことを思い描く若い人たちに是非!読んでもらいたいと思います。

心に残った内容の、”ほんの”一部を箇条書きにします。

  • 働くとは、だれかからの「ありがとう」を集めてくる行為です。p77
  • だまされないためには、けっして「楽してもうけたい」という考えをもたないことです。p97
  • 10円安い卵を探すことは生きていくためには大事かもしれませんが、10円多く払いたくなる生産者を探すことが、活きたお金の使い方を学ぶうえで大切です。p103-104
  • 投資は、「投じて資する」と書きます。投じて相手の役に立つ(資する)ことがなければ、投資と呼びません。それ以外は投機、つまり「もうかる機会に投じる」ことです。p114
  • 投資で一番確実なのは自分への投資です。p118
  • ゲーム理論*図。p119
  • 買いものはクレジットカードを使い、翌月のお給料はクレジットカード会社に支払っているという状態になると、まるでクレジットカード会社に支払うために働いているような感覚になっていきます。p142
  • デビットカードがいいのではないかと思います。クレジットカードを使うとポイントが付いてくるのでお得だと考えている人は要注意ですよ。借金は資本主義における格差を広げるツールになっていることを忘れないでください。p142-143
  • 社会人になったら、まずは生活費一カ月分を貯めることが重要です。p143
  • もっと安い方がいいと、定価を下げてもらう交渉をしたとします。その結果、たしかに自分が得するかもしれません。しかし、それが間接的に「環境や人への不当な支払い」に加担している可能性があるとしたら――それは自分の知ったことではない、と目を背けたとたん、いい循環にはなりません。p144-145
  • 私は仕事として資産運用という「人のお金を運用して増やす」仕事をしてきたのですが、25年ぐらい働いたあるとき、自分の仕事は格差を助長することしかできないのかとショックを受けたことを覚えています。p154
  • 投資家として、金融の専門家として、長らくお金と関わるなかで、「お金に自分の心を支配されない」大切さを学びました。p166
  • 社会的成功を生きる必要はなく、自分で自分の成功を定義し、生きがいをもって生きていく。p168

 この本を読み終えたとき、一筋の光が見えてきました。

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