「復」について

 四字熟語「克己復礼」の「復」について調べてみました。

 音読みは「フク」で、訓読みは「かえ―る、ま―た、ふたた―び」と読むようです。

 意味については、今回は『漢検漢字辞典 第二版』を参考にしました。
①かえる。もどる。行った道をかえる。「復路」「往復」
②かえす。もどす。もとにもどる。「復活」「回復」
③むくいる。しかえしをする。「報復」「復讐(フクシュウ)」
④くりかえす。ふたたびする。「復習」「反復(ハンプク)」

 成り立ちについてですが、まず「復」の一番古い(と思われる)字形を見てみます。
*『漢字源流|中華語文知識庫』より。

この字形にはまだ「彳󠄀(ぎょうにんべん、行の左側)」がありません。このことから、「復」の元の字形は「复」だったようです。

 この字形をもとに『新漢語林 第二版』』では次のように解説されています。

”形声。彳+(复)。甲骨文は、畐(の省略形)+夊(スイ)の会意文字。畐は、ふっくらした酒つぼの象形。ひっくりかえった酒つぼをもとにもどすの意味。夊は、きびすを返すさまにかたどる。もとの道をかえるの意味を表す。転じて、ふたたびの意味をも表す。のち、彳を付す。”

 『漢字源 改訂第五版』』『角川新字源 改訂新版』では、音を示すだけで意味には関係がないとのことでした。

 いずれにしても、どうも納得できないため、調べを進めたところ、『漢字源流|中華語文知識庫』と『漢語多効能字庫』に納得できる解説がありました。どちらもだいたい同じ解説ですので、『漢字源流|中華語文知識庫』の解説を紹介します。原文が中国語ですので、DeepLで翻訳しました。*一部引用し、修正を加えています。

”甲骨文字形は「夊」を従え、人が住む窖室(こうしつ、地下室)を象り、上下に出入口がある。「夊」は出入りの歩行を表す。金文では「彳」または「辵」が増え、いずれも道路歩行を指し、上下出入口に横画を加えることで階段の様相をより強く示す。”

 これが金文の字形です。

 「人が住む地下室を象(かたど)り、上下に出入り口がある。」という解説をヒントにいろいろ調べたところ、次のような記述が目に止まりました。

”窰洞(ヨウドウ、中国音はヤオトン、窯洞)は、中国の陝西省北部、甘粛省東部、山西省中南部、河南省西部の農村に普遍的に見られる住宅形式である。地坑院(ちこういん)とも言われる。
 窰洞は穴を掘ることで作られる住宅であり、主に2つのタイプがある。
洞穴式
山の斜面や崖を横に掘り進めて作るタイプ。
地坑式
地面を1辺の長さ15メートル、深さ7 – 8メートルほど掘り下げ、各辺に3つの洞穴が横に並ぶ形で四方に横穴を掘り四合院を形成する。地表部の縁には落下防止の欄干があり、竪穴の底とL字型の階段で通じている。”『Wikipediaー窰洞ー』より引用、一部抜粋・要約。

 また、『改訂新版 世界大百科事典』によると、古くは仰韶(ぎょうしょう)文化の発掘例があるとのことです。仰韶文化とは、中国の黄河地域に栄えた新石器時代晩期の農耕文化で、紀元前5000頃に始まり紀元前前2500年までの相当長期にわたって継続したとのことです。
 一番古い(と思われる)甲骨文字は殷代(紀元前1600年頃~紀元前1050年頃)のころの字形と考えられていますから、窰洞を描いた文字があったとしても不思議ではないと思います。

 では、最後に、わたしのいつもの勝手な推論です。

 青色の下線に「四合院」とありますが、これは中国北方の伝統的な建築様式のことだそうです。

”東西南北に4棟を配して,中央の院子 (中庭) を取囲む平面配置を特徴とする。こうした配置は住宅だけではなく,前7世紀頃の宮殿や廟にも使われていたことがある。”
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』コトバンクより

 つまり、

地下の四合院=地坑院(窰洞)

ということになるかと思います。
 いくつかの資料から、地坑院は農民の住居だったようですから、地坑院を甲骨文字で表わしたのではなく、四合院を描いたものではないかとも考えられると思います。

 以上です。

*参考資料
『漢字源流|中華語文知識庫』<復>
https://www.chinese-linguipedia.org/search_source_inner.html?word=%E5%BE%A9
『「復」のはなし:かんじのはなし』yumemivision
https://yumemivision.blog.jp/archives/11768644.html
「地下に掘り込まれた中国の伝統的住居”地坑院”を見てみよう」『LIFE INSIDER』BUSINESS INSIDER JAPAN
https://www.businessinsider.jp/article/252848/
『Wikipediaー窰洞ー』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AA%B0%E6%B4%9E
『Wikipediaー四合院ー』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E5%90%88%E9%99%A2
窰洞』コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E7%AA%B0%E6%B4%9E-1213773
『四合院』コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E5%9B%9B%E5%90%88%E9%99%A2-167596
『仰韶文化』コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E4%BB%B0%E9%9F%B6%E6%96%87%E5%8C%96-52722#goog_rewarded

 

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