「約」について

 「博文約礼」という四字熟語にある「約」について調べてみました。
 今回は『新漢語林 第二版』の意味を元に、四つの辞典の成り立ちを見てみます。そして、そのあと、成り立ちについて、わたしのいつもの勝手な推論を記します。かなり違っていますので<苦笑>、子どもたちに説明するときには取り扱いにご注意ください。

 では、「約」の意味と四つの辞典の成り立ちです。

*意味:
『新漢語林 第二版』
①むす-ぶ。たばねる。合わせる。結合する。
②しめくくる。また、しめくくり。しめくくりがあること。要領を得ていること。
③つづまやかにする。つめる。
 ・省略する。簡単にする。「要約」
 ・ひかえめにする。
 ・倹約する。節約する。
④つづ-まやか。
 ・おごらぬこと。「倹約」
 ・ひかえめなこと。
 ・手軽・簡単なこと。
⑤つづ-まる。つづ-める(つづむ)。ちぢめる。
⑥けち。もの惜しみ。
⑦ちかう(盟)。約束する。また、ちかい。約束。「誓約」
⑧苦しむ。なやむ。また、苦しみ。なやみ。「困約」
⑨かがむ。かがまる。
⑩おおむね。ほぼ。大略。「大約」
⑪はかりで量る。

*成り立ち:
『漢字源 改訂第五版』
会意。勺シャクは、一部を高くくみ上げるさまで、杓シャク(ひしゃく)や酌(くみ上げる)の原字。約は「糸+勺(目立つように取り上げる)」で、ひもを引き締めて結び、目立つようにした目じるし。
『新漢語林 第二版』
形声。糸+勺。音符の勺(シャク)は、要に通じ、ひきしめるの意味。糸でひきしめまとめるの意味を表す。転じて、費用をきりつめるの意味をも表す。
『角川新字源 改訂新版』
形声。糸と、音符勺シヤク→ヤクとから成る。糸を束ねる意を表す。転じて、まとめる、簡単にする意に用いる。
『常用字解』白川静
形声。音符は勺(シャク)。勺にヤク(示+勺、まつり)の音がある。勺は柄が少し曲がった匕杓(ひしゃく)の形であるので、糸を曲げて結ぶことを約といい、「むすぶ、しばる、むすびめ、ちかい」の意味となる。

 上記の成り立ちの解説では、「糸」は「ものを束ねたり、まとめたりするもの」としています。また、「勺」については、水をお酒などの液体を汲む道具「ひしゃく」としながらも音符とし、なぜ「糸+勺」の組み合わせで最初にあるような意味になっていったのかどうも腑に落ちません。

 そこで、ここからはわたしの勝手な推論です。

 まず「糸」ですが、繊維を細長くより合わせて作ったものという意味の他に次のような意味もあります。
『新漢語林 第二版』
 ・小数の名。一の一万分の一。昔、蚕のはく一すじを忽(コツ)、五忽を糸(ベキ)、十忽を絲(シ)といった。

 また「勺」については、
『漢字源 改訂第五版』
 ・{単位詞}ます目の単位。一勺は、一合の十分の一。▽小さい方から勺-合-升-斗-石と進む。周・秦シン・漢の一勺は約〇・〇一九四リットル。
という記述があり、解字では、
 ・象形。スプーンで液体の一部をくんださまを縦に描いたもの。
と分析されています。

 以上の点から、「糸」も「勺」も数や量が少ないことを表わすものとし、その二つを組み合わせて「約」の意味になったのではないかと思います。

 『新漢語林 第二版』には「約」の甲骨文字がありましたが、その組み合わせをみてみると、「糸」と「勺」ではなく、「糸」と「匕(さじ)」のように見えます。このことからも、「約」は元々、数や量が少ないことを表わそうとして作られた漢字であったと推察しています。
 そして時代が進み、「さじ」から、単位を表わす「ひしゃく」に置き換えられたのではないかと思います。

 以上、誤りがあることは承知の上で、自分の考えを残しておきます。
 子どもたちが「約」の成り立ちを知りたい場合は、まず一般的な成り立ちを説明した上で、納得できないようだったら、「こういう見方もあるよ」と紹介してもらえたらと思います。


 

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