漢数字:一から九までの成り立ちについて

 四字熟語にも度々出てくる漢数字ですが、その成り立ちについて詳しく調べたことはありませんでした。
 そんなに難しくはないだろうと調べ始めたところ、中には成り立ちが不明というものもあって、たいへんでしたが、なんとか自分なりに納得できる答えにたどり着くことができました。
 漢字とはいえ数字ですから、その成り立ちなどは知らなくてもいいように思いましたが、子どもたちに質問されたときの知識として知っておくといいかもしれません。
 なお、今回は意味については触れません。別の機会にそれぞれ説明したいと思っています。

 では、まず「一」「二」「三」についてですが、どれも指事文字で、横線の数で1,2,3になります。
 そして、「四」「五」も古い時代には横線の数で表わしていました。

 このように縦に書くと、わかりにくいというか紛(まぎら)わしいですね。
 そのためだろうと思いますが、時代が進むと「4」は次のように変化しました。

 現在の字形によく似ています。
 では、なぜこのような字形になったのかですが、もしかしたら、方位や易が元になっているのかもしれません。
 方位というと、「上・下・左・右」「左・右・前・後」「東・西・南・北」が思い浮かぶと思います。
 上記の字形は「四角(□)」と「八」の組み合わせになっていて、「四角(□)=4辺、4方向=4」「八=分ける」とし、「4つに分ける」というイメージで作られた字形のように思います。

 これが「八」の古い字形ですが、「四」から「四角(□)」を取ってしまって「8」にしたか、あるいは「分ける=八(8)」という字形を基本とし、それを四角(□)で囲んで「4」としたのかもしれません。
 易や占いに用いられる八卦(はっけ、はっか)は8つに分類されていますし、八方向による方位は特に易で用いられていたそうです。

方位:北・北東・東・南東 ・南・南西・西・北西
八卦:坎(かん)・艮(ごん)・震(しん)・巽(そん)・離(り)・坤(こん)・兌(だ)・乾(けん)

*注)上を(北)とする後天図の場合。

 このように8という数字は様々な事象を分類する上での代表的、特徴的な数字なのかもしれません。

 では、「五」はどのような流れで今の字形になったのでしょうか。改めて一番古い(と思われる)字形と、時代が進んでからの字形をみてみます。

 当時の人たちも最初の字形は紛らわしく思ったのか、あまり長くは使われなかったようです。そのため、上下の横線を残して、あいだを「×」印にして「5」を表わそうとしたのではないかと思います。「×」に何か意味があるとするよりは、図形的なものではないかと思います。
 そして、現在の「五」になったわけですが、これは画数では4画になりますが、横線縦線の数でいうと5本になり、よく考えられた字形だと思います。

 では、次に「六」の成り立ちについてです。一番古い(と思われる)字形を見てください。

 何冊かの漢和辞典では、屋根の形、家屋の形、何かで覆(おお)われた穴というふうに見ていて、いずれにしても、なんらかの建物、住居を表わしていると考えていいと思います。

 では、なぜこの形を「6」としたのかですが、これは「四」「八」と同じように「方位」に関係があるように思います。
 『Wikipediaー方位ー』の「立体における方位」に次のような説明がありました。

”六方を象徴する物としては、正六面体(さいころ)や室が代表的であり、建造物は一般に六面体で造られる。家屋は、上面を二分して七面体(=五角柱)で造られる例が多いが、上面を一面構成にして六面体で造られる例もある。”

 とあり、わたしはこれが元となって「六=6」になったのだと思っています。

 では、次に「七」についてです。一番古い(と思われる)字形を見てください。

 一見すると「十(10)」だと思ってしまいますが、「7」です。「10」は古い時代、縦線「|」で表わされていました。後(のち)に、縦線「|」の真ん中あたりに肥点「・」が加えられてそれが横線へと変化し、今の「十(10)」になりました。

 では、7を表わすのにどうして「十」のような字形になったのかについて説明します。
 1から9までの数字の中で、3,5,7は、1とその数自身でしか割り切ることができません。そのうち、3と5は字形がすでに決まっていたためでしょうか、7を割り切ることができない数と見て、縦線を横に、あるいは横線を縦に無理やり”切って”分ける様子を「7」としたのではないかと思います。
 ちなみに「七」は「切る」の原字であると考えられています。
 そしてのちに「10」を「十」と表わすようになったため、縦線の下の部分を曲げて「七(7)」にしたのだと思います。

 最後に、「九」についてです。

 これが古い字形で、今の「九」と似ています。では、何を象ったものかというと、何冊かの辞典では、肘(ひじ)や手が曲がっている、とか、何かが屈曲して尽きる、というふうにみています。
 一方、白川静氏『常用字解」によると、「身を折り曲げている竜の形」とのこと。わたしはこの見方が正しいように思います。
 『Wikipediaー中国の竜ー』に「9の数は中国で天の数とされ、中国の竜は頻繁に9の数に関連づけられる。」とあり、また、「9は皇帝の数」とも言われていたそうです。
 こういったことから、「身を折り曲げている竜の形」とする白川氏の説明が一番わかりやすく、なるほどと納得できる説明だと思います。

 以上、一から九までの成り立ちについてわたしなりに出した答えです。各辞典の解字や成り立ち、語源の説明とは異なっているものが多いので、子どもたちに説明するさいには、他の解釈と比べながら、説明してください。

 以下に、四冊の辞典の成り立ちの説明を付しておきますので、参考にしてください。

①『漢字源 改訂第五版』
②『新漢語林 第二版』
③『角川新字源 改訂新版』
④『常用字解』白川静
の順で、「四」から「九」までの解説です。

「四」:
①会意。古くは一線四本で示したが、のち四と書く。四は「口+八印(分かれる)」で、口から出た息が、ばらばらに分かれることをあらわす。分散した数。呬キ(ひっひと息を分散させて笑う)の原字。
②指事。甲骨文・金文は、四本の横線で、数のよつの意味を表す。篆文は、呬(キ)の原字。四は、口の中に歯・舌の見える形にかたどり、いきの意味を表すが、これを借りて、よつの意味に用いる。
③象形。開けた口の中に、歯や舌が見えるさまにかたどり、息つく意を表す。「呬キ(息をはく)」の原字。
④四は呬(し、口気をもらす)の音符の四(し)をとったもので、口を開いて笑う形。その音を借りて用いる。

「五」:
①指事。×は交差をあらわすしるし。五は「上下二線+×」で、二線が交差することを示す。片手の指で十を数えるとき、→の方向に数えて五の数で←の方向に戻る。→←の交差点にあたる数を示す。
②指事。二は、天地、(ゴ)は、交差を示し、天地間に交互に作用する五つの元素(木・火・土・金・水)の意味から、数のいつつの意味を表す。
③指事。二本の線が交わった形から、物事が交錯するさまを示す。借りて、数詞の「いつつ」に用いる。
④仮借。木を斜めに交叉(こうさ)させて作った器物の二重の蓋(ふた)の形。これを数字の五に用いるのは、その音だけを借りる仮借(かしゃ)の用法である。

「六」:
①象形。おおいをした穴を描いたもの。数詞の六に当てたのは仮借カシャ(当て字)。▽一説に高い土盛りの形で、陸リク(高い丘)の異体字ともいう。
②象形。甲骨文は、家屋の形にかたどる。転じて、数のむつの意味を表す。
③象形。屋根の形にかたどる。借りて、数詞の「むつ」の意に用いる。
④仮借。小さなテントのような形の建物の形で、六を重ねた形が坴(りく)。この幕舎(ばくしゃ)の意味に用いられることはなく、その音を借りて数の六、「むつ」の意味に用いる。

「七」:
①指事。縦線を横線で切り止め、端を切り捨てるさまを示す。また、分配するとき、三と四になって、端数を切り捨てねばならないことから、中途はんぱな印象をもつ数を意味する。▽七は切の原字。
②指事。甲骨文は、縦横に切りつけたさまから、きるの意味を表す。切の原字。借りて、数のななつの意味を示す。
③指事。横線を縦線で切断するさまにより、たちきる意を表す。「切セツ」の原字。借りて、数詞の「ななつ」の意に用いる。
④仮借。切断した骨の形。これに刀を加えると切(きる)となる。数の「ななつ」の意味に用いるのは、その音を借りる仮借の用法である。

「八」:
①指事。左右二つにわけたさまを示す。「説文解字」に「別なり」とある。
②象形。二つに分かれているものの形にかたどり、わかれるの意味を表す。借りて、数のやつの意味に用いる。
③指事。たがいに背き合っている二本の線で、わかれる意を表す。借りて、数詞の「やつ」の意に用いる。
④指事。左右にものが分かれる形。もと算木(さんぎ、数を数えるときに使う道具)で数を示す方法であり、数の「やつ」を示す。

「九」:
①象形。手を曲げて引き締める姿を描いたもので、つかえて曲がる意を示す。転じて、一から九までの基数のうち、最後の引き締めにあたる九の数、また指折り数えて、両手で指を全部引き締めるときに出てくる九の数を示す。
②象形。屈曲して尽きる形にかたどる。数の尽ききわまった、ここのつの意味を表す。
③象形。人がひじを曲げた形にかたどる。借りて、数詞の「ここのつ」の意に用いる。
④象形。身を折り曲げている竜の形。竜に虫(き、昆虫のむしではない)の形と九の形とがあり、九は竜の頭が岐(わか)れている形で、おそらく雌(めす)の竜であろう。数の「ここのつ」の意味に用いるのは、その音を借りる仮借の用法である。

 以上です。

*参考資料
『Wikipediaー方位ー』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B9%E4%BD%8D
『Wikipediaー中国の竜ー』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AE%E7%AB%9C
「やっぱり漢字が好き。4 なぜ“4”は「四」と書くのか?(下)」戸内俊介、2022.12.1『kanji café(漢字カフェ)』公益財団法人 日本漢字能力検定協会
https://www.kanjicafe.jp/detail/10342.html






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