読み:ぶんしつひんぴん
意味:外見の美しさと内面の実質がよく調和していること。
出典:『論語』<雍也 第六>
<書き下し文>
子曰く、質 文に勝てば、則(すなわ)ち野(や)。文 質に勝てば、則ち史(し)。文質彬彬として、然(しか)る後(のち)に君子(くんし)たり。
<現代語訳>
老先生の教え。中身(内容・本音[ほんね])が外見(形式・建[た]てまえ)を越えると、むき出しで野卑。外見が中身以上であると、定型的で無味乾燥。内容と形式とがほどよくともに備わって、そうしてはじめて教養人である。
*書き下し文、現代語訳共、加地伸行氏の『論語』より。
解説①:「文」と「質」について
最初に示した意味を見ると「文=外見の美しさ」であり、「外見の美しさ」という言葉からは、人の顔や姿であったり、更には髪型や化粧(けしょう、メーク)に服装、アクセサリーなどが思い浮かんでしまいます。
しかし、ここでの「外見の美しさ」というのは単なる「オシャレ」ではなくて、現代語訳にあるように「外見=形式・建てまえ」のことを指します。
つまり、人と人との関係を良好に保つための行動や作法が形となって外に表れ、それが正しい、理にかなっているといった場合には美しく見えるということではないかと思います。
「質」は現代語訳では中身(内容・本音)と訳されていますが、人の持つ性質・資質・性格・素質などと付け加えると、わかりやすいかもしれません。
なお、「質」の成り立ちなどの詳細は、出直し!漢字学習のコーナーで別に解説しますので、そちらをご覧ください。
解説②:「野」と「史」について
「野」は現代語訳では「むき出しで野卑(やひ)」となっています。他の解説書では「田舎びた者・こと。粗野なこと。」とありました。
解説①を元に説明すると「人と人との関係を良好に保つための行動や作法を知らない、あるいは、身についていない人・こと」を「野」というのだと思います。いわゆる礼儀を知らない人・ことを指すという理解でいいと思います。
「史」は「歴史」という言葉に含まれるように、記録すること・人のことを表わします。具体的には、その国で起こった出来事などの記録を担当する役人のことのようです。そういったことが担当できる人は記録される内容についての幅広い知識がある人でないとできませんから、それをやや否定的に、知識があって優秀であっても、人として誠実な面が足りない人・ことという意味で使われているように思います。
解説③:「勝つ」について
「勝つ」と聞くと、野球やサッカーなどのスポーツの試合で勝つことが想像されると思います。
しかし、ここではそういう意味ではなく、「他よりも上である、優(すぐ)れている、勝(まさ)る、より良い」という意味で使われていると思います。
解説④:「彬彬」について
「彬(ヒン)」の組み合わせは「木+杉」ではなくて、「林+彡󠄀(サン)」という組み合わせになります。「彡󠄀」は、いろどり・模様・美しさ・飾りなどに関する意味を表わしますので、木々が並び揃っていることを表わしています。
「彬」一字でもいいんですが、二つ重ねてその意味を強めているということだと思います。
なお「彬」についての詳細は、出直し!漢字学習のコーナーで別に解説しますので、そちらをご覧ください。
<教えるときのポイント>
今回の四字熟語は、人と人との関係を良好に保つための行動や作法と人間性、そのどちらもバランス良く備えていることを良し、とする内容でした。
このことは学校でも習うとは思いますが、人と人との関係を良好に保つための行動や作法、いわゆる躾(しつけ)やマナーといった面は家庭に任される部分が多いように思います。
わたしの幼なじみはわたしと違って<恥>、箸(はし)の使い方がとても上手でした。あるときその理由を尋ねると、小さい頃、食事時に父親からかなり厳しくしつけられていたとのことでした。
わたしが子どもの頃は、悪いことをしたり、間違ったことをしたりしたときは、自分の親だけではなく周りの大人からも叱られるのが当たり前でしたが、今は自分の子どもでさえ、叱ったりすることがはばかれるような時代となり、「文」と「質」のバランスをとることの難しさを感じています。
*参考資料:
『論語』加地伸行、講談社 *講談社学術文庫
『論語』吉田賢抗、明治書院 *新釈漢文大系第1巻

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