482:売剣買牛

読み:ばいけんばいぎゅう
意味:戦争をやめて、武器を売り牛を買って、農業を盛んにすること。
出典:『漢書7 列伝Ⅳ』<循史伝第五十九・龔遂>*ちくま学芸文庫

解説①:
 出典の『漢書』は古代中国の歴史書で「漢(かん)」は王朝名です。歴史的に前漢(紀元前206/202~紀元後8年)と後漢(ごかん、紀元後25~220年)に分けられていて、『漢書』は前漢時代について書かれたものになります。
 第10代皇帝の宣帝(紀元前74~紀元前49年)時代、ある地域に飢饉が続き、盗賊が増えましたが、誰もその状況を良くすることができずにいました。そこで宣帝は龔遂(きょうすい)という人をその地域の太守(たいしゅ、長官のこと)に任命しました。
 役人には循史(じゅんり)と酷吏(こくり)という二つのタイプがありました。循史とは法律をよく守り政治につとめる善良忠実な役人のことを言うのに対し、酷吏は法律をきびしく適用する無慈悲な役人のことを言い、龔遂は循史でした。
 龔遂が赴任した当初、あるひとつの地域の暮らしぶりは身分不相応で、畑を耕したりすることを怠っていました。そこで龔遂は自ら率先して倹約に努めました。人民には農耕と養蚕(ようさん)に励むように勧め、楡(にれ)の木、辣韮(らっきょう)、葱(ねぎ)、韮(にら)を植えさせ、豚や鶏を飼わせました。また、刀剣を所持している者があれば、剣を売って牛を買わせ、刀を売って犢(子うし)を買わせたそうです。
 更に、巡回視察をして努め励ましたため、その地域の者全てに蓄えが生じ、人々は富み充実しました。争い事もなくなったそうです。

解説②:
 「循史」の「循」という漢字を見ると、「循環(じゅんかん)」という熟語を思いつくかもしれません。「循環バス」というような使われ方です。この場合の「循」は「めぐーる(巡る)」という意味になります。
 「循史」の場合の「循」はそうではなく、「したがーう(従う)、その通りにする、寄り添う、善良な、素直な」などと言った意味で用いられています。

教えるときのポイント:
 この四字熟語は二千年以上前に語られていたことが元となっているんですが、今の時代にも、そして、これから先の未来にも通じる、普遍的な課題のように思えます。
 子どもたちといっしょになって考え、話し合うきっかけにしてもらえたらと思います。

*参考資料
『漢書7』< 列伝Ⅳ>班 固(著)、小竹 武夫(訳)、筑摩書房*ちくま学芸文庫
『中国通史で辿る名言・故事探訪ー循吏・龔遂』河野長生
https://gonsongkenkongsk.blog.fc2.com/blog-entry-2473.html
『漢代の循吏と酷吏の性質についての考察』何 俊、九州大学大学院、九州大学学術情報リポジトリ
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1786936/p001.pdf




 

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