596:良知良能

読み:りょうちりょうのう
意味:人間が生まれながらにそなえている知恵と才能のこと。
出典:『孟子』<尽心章句・上、15章>

解説①:
 まず、最初にこの四字熟語が出てくるところの訳文をそのまま掲載します。

”孟子が言うに、「人が学ばずして自然によくする所のものが人の良能であり、別に考えもしないでも、自然に知るところのものが人の良知である。小さい子供でも、その親を愛する事を知らない者はない。少し大きくなると、その兄をうやまうことを知らない者はいない。この親族を親しむのが仁の行ないであり、長者をうやまうのが義の行ないである。正道を行なうといっても外(ほか)にはない、ただこの親を親しみ、長を敬する心、即(すなわ)ち良知良能を押しひろめ、天下にゆきわたらせれば、よいのである。」と。” *『孟子』内野熊一郎、新釈漢文大系第4巻、明治書院より

 「良知」は特に考えないでも自然に知る能力のこと。「良能」は修習によらず自然によくする能力のこと。と、内野氏は解釈しています。

 青色のマーカー部分に「親族を親しむのが仁の行ないであり、長者をうやまうのが義の行ない」とありますが、これは孟子が唱える「仁義」のことです。この「仁義」については、「先義後利」という四字熟語の解説のところでも書きましたが、そのときは、「人と人とが接するときに大切にしなければならない心のことが仁」で、金谷治氏によると、「人と人との交わりのうえで、現実の差別のすがたに応じて、それに適合した態度を決定する徳」のことを「義」としています。
 この良知良能の説明では、より具体的に、「親族」や「長者(目上の人)」というふうに解説しています。
 ようするに、「仁義」のひとつとして「良知良能」を広め、より良い社会・世界を目ざそうということを孟子は言いたかったのだと思います。

解説②:
 意味に、「人間が生まれながらにそなえている知恵と才能」とあって、「才能」というと、頭がいいというふうに理解しがちですが、そうではなく、あくまでも、「生まれながらにそなえている」ものです。それは、親兄弟をはじめとする身近な親族を敬い大切に思う心です。
 子どもたちの中にはピンとこないかもしれませんが、最近のニュースを観ていると、子どもが親に手をかけたり、孫が祖父母を殺(あや)めたりといった事件が毎日のように起きています。こんなことが日常茶飯事になっていることに心痛めていますし、あってはならないことだと、強く思います。
 「生まれながらにそなえている」はずのものはどこにいってしまったのでしょうか。
 孟子の言う世界は理想的で実践が難しい社会ではありますが、やはり理想は理想として常に追い求めていきたいものです。

解説③:
 「良󠄀」については、「出直し!漢字学習・良󠄀と艮」で解説していますので、そちらをご覧ください。また、「知」「能」については、別に記事にしますので、掲載後に改めて、このページにリンクを張ります。

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