読み:さいかん(の)しょうはく
意味:逆境にあっても志や節操を変えないたとえ。
出典:『論語』<子罕(しかん)第九>
<書き下し文>
子曰く、歳(とし)寒くして、然(しか)る後(のち)に松栢(しょうはく)の後(おく)れて彫[凋](しぼ)むを知る。
<現代語訳>
老先生の教え。寒さの厳しい年があるとき、そのときになって、[常緑樹の]松・柏が他の木々よりも遅れて萎(しぼ)むことをはじめて知る。
*書き下し文、現代語訳共、加地伸行氏の『論語』より。
解説①:
基本的には、最初に示してある「逆境にあっても節操を変えないたとえ」ですが、原文を元にした書き下し文、現代語訳を読むと、より意味深い内容であることがわかります。
加地伸行氏の『論語』の”注2”に次のような解説もありました。
”寒いと、常緑樹以外の他の樹木は早く枯れ萎むことを、人間において節操がなくすぐ志を変えることに替え、松栢はその逆として譬(たと)えていると解釈されている。”
この解説を元に、わたしなりの補説と解釈を加えてみたいと思います。
木の種類の分け方に落葉樹と常緑樹という分け方があります。落葉樹は、春から秋の間は葉がありますが、冬になると葉が全部枯れてしまいます。いわゆる葉の寿命は一年以内ということになります。一方、常緑樹の葉も落葉樹の葉と同じように枯れますが、寿命が長いため、寒い冬の間でも枯れずに残ります。そしていずれは枯れますが、春になると新しい葉が出てきて少しずつ入れ替わっていくため、常に葉があるように見えます。
このように、常に葉がある状態を保つため寒い冬を乗り越える姿、見えないところで次につないでいく状態を、人としての生き方に例えたのだろうと思います。
解説②:
篇名、そして意味や解説に出てくることばについて、説明します。
子罕(しかん):
『論語』は全体が二十に分けられていて、そのひとつひとつを篇(へん)と言います。そして各篇の最初の文の二文字を篇名にしています。
今回は、次のような一節からです。
原文:「子罕言利、與命、與仁」
書き下し文:「子、罕(まれ)に利を言うとき、命と与(とも)に、仁と与にす。」
現代語訳:「老先生は、たまに利についておっしゃられたが、そのときは命や仁とともにであった。」
*「利」は、利益のこと。もうける(儲ける、利益を得る)こと。
*「命」は、天命・運命・使命などのこと。
*「罕」は、鳥を捕まえるときの柄のついた小さい網のこと。
捕まえることが難しかったことから「まれ、たまに、めったに~ない」という意味に当てられたのかも?(わたしの憶測です<笑>)。
節操(せっそう):
自分が正しいと信じる主義・意見・考え方などを簡単に変えることなく守り続けること。
しぼむ(萎む・凋む):
しぼむとは、元気がなくなった状態のことを言い、花がしぼむ(開いていた花が閉じる)風船がしぼむ(中の空気が少なくなる)といった表現に使われますが、ここでは「枯れる」ことを言っています。また、書き下し文にある「彫」は「木を彫(ほ)る」「彫刻(チョウコク)」のように使われますが、ここでは「しぼむ=枯れる」という意味で使われています。
栢(ハク、柏):
この漢字は「柏(ハク、かしわ)」の異体字です。「柏(かしわ)」というと日本では広葉の落葉樹のことですが、中国では針葉の常緑樹のことです。この違いなどについては、長くなりますので、「出直し!漢字学習」のコーナーで解説します。
<教えるときのポイント>
今回の四字熟語「歳寒松柏」は、その意味も大切ですが、それを表現するときに、自然を題材にしているところがすばらしいと思います。
日々を過ごす中で、周りの自然の変化を感じる機会が少なくなってしまっていることが多いと思いますが、少し心に余裕を持って辺りを見回してみると、そのときどきに変化があることに気づかされます。
今月2月のカレンダーに次のような言葉が書かれてありました。
”梅只雪霜先(うめはただせっそうのさき)”
<大意>
”風雪を耐え抜いた一輪の梅花。天真の妙趣をたたえて、初春はこの一輪の香りから展開される。梅は寒苦に耐えて花を咲かせる。その物言わぬ美しさ、忍耐強さに心うたれる。”
(曹洞宗大本山總持寺副貫首(奥州)正法寺専門僧堂・盛田正孝老師)
以上です。
*参考資料:
『森の不思議ー第10話「落葉樹と常緑樹のいろんな特性」ー』皿山ビジターセンター、NPO法人帆柱自然公園愛護会
https://www.hobashira-aigo.jp/docs/

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