読み:いちばくじっかん
意味:努力が少なく怠󠄀(おこた)ることが多いのを戒めた語。
出典:『孟子』<告子章句・上>
解説①:
この四字熟語は次のような文から作られました。以下、引用ですが、いくつかの漢字には読みをつけています。
”孟子が言うに、「斉王は道について何も知らないのではないかと、あやしんではならない。天下にどんなに生育しやすい物があっても、これを一日あたため、十日冷やすというようなことをすれば、よく生育するなどということはないものだ。それと同じで、自分が斉王に見(まみ)えることは稀(まれ)であり、自分が退出すれば、これを冷やそうとするものが、次々とやってくる。これでは、斉王が良心の萌芽(ほうが)を生じたとしても、その萌芽を一層(いっそう)育成することを、自分としてもどう出来ようぞ。どうもすることができないのである。”
このような言葉のあと、更に孟子が次のような例え話をします。以下、短くまとめました。
囲碁の名人が二人の弟子に囲碁を教えています。一人は心を専一(せんいつ)にし、志をしっかり立てて、ただ一筋に教えを聞いています。もう一人も教えを聞いてはいますが、聞きながら、「もう間もなく白鳥が飛んでくるだろう。そのときはこうして弓矢を引いて白鳥を射てやろう。」などと考えています。これでは、いっしょに学んでいても、後者は前者にとうてい及びません。これは後者の知恵が前者の知恵に及ばないためでしょうか。いえ、そうではなく、全く専心努力をしないからです。
解説②:
解説①で孟子が言いたいことのひとつは青いマーカー部分だと思います。それは、
・人は誰でも持って生まれた能力がある。備(そな)わっている。
ということだと思います。そのことがまず大切です。しかし、せっかくのその能力も、努力するかしないかで差が生じてしまう。それはもったいないことだと言いたいのだと思います。
そして、その努力を続けるさいに大切なこととして、赤色のマーカー部分があります。つまり、何かを成し遂げるためには、目的を明確にして心に誓い、迷うことなく集中して取り組むことが大切だと言いたいのだと思います。
解説③:
「暴」は「ボウ」と音読みすることが多いと思いますが、「日光や風雨に当てる(当てたままにしておく=さらす)、日に当てて湿気をとる(乾かす、干す)」というような意味のときには、「バク」と読むようです。辞書では「曝」の元となる漢字、あるいは「曝」の置き換え字と説明しています。
「暴」の成り立ちについては、長くなりそうなので、「出直し!漢字学習」で解説したいと思います。のちほどリンクを張りますので、そちらを参考にしてください。
「寒」については、次のような理解でいいかと思います。
「宀」(家屋)+「茻」(多くの草)+「人」
から構成され、屋内で人が草を被って寒さをしのぐさま。*Wiktionaryの「寒」より。
この成り立ちは次のような古い字形を元にしています。

そして、同時代の古い字形と思われるものに次のような字形があります。これは白川静氏の金文のフォントをお借りしています。

前の字形と比べると、真ん中の「人」の形に「足」が加えてある他、一番下に「=」のような字形があります。これを「冫󠄀(氷)」とみるかどうか意見が分かれているようですが、いずれにしても、二つの古い字形ではうまく「寒い」という意味が伝わらなかった、あるいは「寒い」という意味がよくわかるように今の字形では「冫󠄀(氷)」が加えられていると理解するといいと思います。
わたしが調べた限りでは、「十」のように見える字形は「草」だとする辞典がほとんどでしたが、『漢字源』は「草」ではなく、「れんがや石(I印)を積んでいる状態」とし、さらに「手で穴をふさいでいる様子」だとしています。これはおそらく、「塞(ふさ)ぐ」という漢字と「寒」の今の字形が似ているからだと思われますが、「塞」の古い字形は次のような字形です。

この字形と比較すると、「寒」と「塞」は成り立ちが違っていると思われますが、いずれにしても、「家の中で、なんらかの方法を使って寒さをしのいでいる」ということだと思います。
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