やくそく

作・絵/成田雅子
発行所:講談社
発行年:2004年4月
出版社の内容紹介ページ:ここをクリックしてください。

随感随筆:
 猫の名前は”よも”。”ゆうじ”さんと二人で暮らしています。一緒に釣りをしたり、歌を歌ったりして楽しく暮らしていましたが、新しい仕事に就いてからのゆうじさんはとっても忙しくなり、段々と家の様子が変わっていきます。
 お気に入りのコートも着る暇がなく、ピアノを弾くのもやめてしまいます。家でご飯を食べることもなくなり、テーブルや椅子はほこりをかぶり・・・。そして、コートもピアノも、テーブルや椅子、そのものまでもなくなってしまいますが、ゆうじさんはなくなったことにも気づかない様子。
よもは忙しいゆうじさんを気遣って、「ぼくと、のんびり釣りでもしない?」と誘いますが、ゆうじさんは「また、今度ね。」と、素っ気ない返事。よもは、「約束だよ、きっとだよ」と念を押しますが、ゆうじさんは家で寝ることもなくなり、数日後、家に帰ってこなくなりました。
もう部屋には何もありません。そんな部屋で釣り竿とバケツを用意してぽつんと一人、ゆうじさんを待つよも。そのうち、家までもなくなり、とうとう何にもなくなってしまいました。

「もしかしたら、僕もなくなっちゃうのかな。」と、よもは胸がぎゅうっとなります。

 そんなある日、ゆうじさんは、よもと釣りの約束をしていたことを思い出したといって、帰ってきました。すると、不思議なことに何にもない荒れ地に池がぽっかりとあらわれます。二人で糸を垂れ、のんびりと静かなときをすごしていると、荒れ地にはしだいに草が茂り、林が現れ、鳥が鳴き始めます。そして池のそばには家も現れました。
 すっかり元通りになり、ほっとしたよもですが、ゆうじさんに、「明日もちゃんと帰ってくるの?」と尋ねます。「うん。」と答えるゆうじさんに、「その次もその次の日も?」と尋ねると、ゆうじさんは「きっと、おそらく・・・たぶんね。」と曖昧な返事。よもはため息をついて部屋の明かりを消し、夜は静かに更けていく、という場面で終わります。
 読み終わったあと、なんとも不思議な余韻が残りました。最初は、単純にコートやピアノが消えてしまったと思っていましたが、そうではなくて、忙しいゆうじさんの心の中をわかりやすく描いているのか、あるいは、よもの心の中を表現しているのか、などと思ったりしました。いずれにしても、約束の大切さ、人と人とのきずなのあり方、などを教えてくれる絵本だと思います。
 約束をした当人は軽い気持ちで言ったとしても、受け取る側がそれをどう受け取るかわかりません。なので、受け取る側の気持ちになって約束をしなければならないんだと思いました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました