数の単位:「十」について

 数の単位には、一・十・百・千・万・億・兆・・・等がありますが、「一」については『漢数字:一から九までの成り立ちについて』で説明をしています。「十」についても触れてはいますが、今回改めて見てみたいと思います。

 はじめに「十」の古い字形を、古い順に三つ並べてみました。

 この字形の成り立ちには諸説ありますが、『漢語多功能字庫』にわかりやすい解説がありましたので、箇条書きにしてみました。なお、原文は中国語ですので、『DeepL』で翻訳したものを元に加筆・修正しています。

ア)元は「ハリ(針)」を象(かたど)ったもので、その形「丨」を借りて十とした(裘錫圭)。
イ)数が十に達すると位が1つ上がるため、「一」を縦にして「丨」を十とした(于省吾)。
ウ)「十」が杖の形を象っている(朱芳圃)。
エ)両手の指の数は十であり、手を合わせて立てると、両側がわずかに膨らんだ一本の直線に見えるため(郭沫若と張秉権)。
オ)結繩(けつじょう)の形を象っている。古くは結繩を用いて数を記録していた(馬叙倫)。
カ)「一」は東西、「丨」は南北を表す。重ね合わせると中央も加わり、すべての位置が備わる(『説文』)。

 その他、
”「十」の字は、西周中期における金文では、縦画の中央に丸点を加えることがあり、その丸点は中空の形をとっていたこともある。春秋以降、丸点は短い横画へと伸び、すなわち「七」の字の形に近くなった。羅振玉は、横画が短いのが「十」、長いのが「七」であると指摘している。”
という解説もありました。

 どの説が正しいのか、わかりませんが、どの説も、「なるほど!、そういう見方もあるのか」と感心しています。中でも、わたしは「イ」の説、

「一」を縦にして「丨」を十とした。

が一番、理に適(かな)っていて、わかりやすいように思います。
 このことに関連する資料がありましたので、引用・紹介します。

”命数法(めいすうほう):
 整数を、数詞によって表す方法。つまり数の唱え方をいう。一つ一つの数にそれぞれ違った、しかも関係のない数詞を割り当てていくことは、数の範囲が少ないときは別として一般には不可能である。そこで特定の数を表す数詞を決め、その組合せで他の数を表している。
 今日、一般に使われている十進命数法では、まず、一、二、……、十(じゅう)の数について数詞が定められる。十を超す数は十一(十と一)、十二(十と二)、……のように十九まで数詞が決められ、次は十と十、つまり二つの十という意味で二十という数詞がつくられる。このように十を一つの単位として、それまでのものと組み合わせていき、二十一、……三十、三十一、……、九十、九十九と進んでいく。その次は十が10個で、これまでにない数詞百(ひゃく)を必要とする。同じようにして百が10個で千(せん)、千が10個のとき万(まん)という新しい数詞を必要とする。
 日本では千が10個のとき万とし、以降は十万、百万、千万と進み、その次に億(おく)が定められる。[三輪辰郎]出典:『小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)』” *『コトバンク』より。

 このように10を単位とする場合、「一」に対して「丨」とするのが視覚的に混同も少なく、区別しやすいように思います。
 しかし「丨」とだけ表記すると、それを「ハリ(針・鍼)」を描いた形と見てしまうのもわかるような気がします。そのため、「丨」の真ん中に丸点を加えたり、「一」の次の位という意味で、「丨」に「一」を加え、誤った見方をしないようにしたのかもしれません。

 なお、参考までに、いくつかの辞典類の成り立ちの解説を付しておきます。

『漢字源 改訂第五版』
指事。全部を一本に集めて一単位とすることを┃印で示すもの。その中央がまるくふくれ、のち十の字体となった。多くのものを寄せ集めてまとめる意を含む。

『新漢語林 第二版』
象形。甲骨文でわかるように、針の形にかたどり、はりの意味を表す。針の原字。借りて、数の「とお」の意味に用いる。

『角川新字源 改訂新版』
象形。はりの形にかたどる。「針」の原字。借りて、数詞の「とお」の意に用いる。

『常用字解』白川静
指事。数を数えるときに使う算木(さんぎ)で数を表わし、横一本は一、縦一本の|が十であった。金文では|の中央に肥点(●)を加え、のち十の字形となった。

『Wiktionary』
未詳。一説に「一」を縦にした形。「とお」を意味する漢語「十」を表す字。針の象形とする説があるが、「針」字の成立が「鍼」よりも遅く不自然であることや、「箴」の表意初文が別に存在していることから、近年ではあまり有力視されていない。

 以上です。

*参考資料
『コトバンクー命数法』
https://kotobank.jp/word/命数法
『小學堂|字形演變󠄀』<十>
https://xiaoxue.iis.sinica.edu.tw/yanbian?kaiOrder=18
『漢語多功能字庫』<十>
https://humanum.arts.cuhk.edu.hk/Lexis/lexi-mf/search.php?word=%E5%8D%81

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