助:教育&常用漢字、漢検8級

 「助長抜苗」という四字熟語に含まれる「助」について調べたところ、不明なことが多くてよくわかりませんでした。そのため、いつもながらの憶測を含む内容になりますが、備忘録として残しておきたいと思います。

 まず、「助」の意味の確認です。基本的には「助ける」でいいと思いますが、「力をかす、手伝う、救(すく)う」といった意味合いも含まれていると思います。

 問題なのは、成り立ちです。

 古い時代においても、「人を助ける」「仕事などを手伝う」「一人ではたいへんなとき、力をかす」「危険な目にあっている人を救う」といった行為は社会生活を営む上でふつうに行われていたと思います。それを文字として表そうとされたようですが、それがかなり難解で『漢語多効能字庫』によると、甲骨文字で表されている「助」の字形の成り立ちは”不明”とされています。
 ”不明”ということを前提として、その古い字形を眺めていると、「苗、あるいは田がいくつかに区切られた状態」のように、わたしにはみえました。

 そこで改めて「助」の意味を『漢字源』『漢語林』『角川新字源』でみてみると、「助ける」以外にも共通してほぼ同じような意味がありました。

 「殷(イン)・周代に行われた租税法。田地を井の字形に九等分して、外側の八区画を八家に与え、中央を公田として共同耕作し、その収穫を租税にあてたもの。」『新漢語林 第二版』より。

 この税法のことを「助法」というようで、孟子が唱えた井田(せいでん)法とのことです。

「古代社会にこれと近い共同耕作があったことは考えられるが,この法の存在を跡づけることは困難で,多分に儒家による粉飾があるといわれている。」『山川 世界史小辞典 改訂新版』「井田法」の解説より。

 以上のことを考え合わせると、「助」は当時の「耕作」に関係する漢字のように思えてきました。そして、このことを頭において、「助」の成り立ちをみていきます。

 「助」は、先に書いたように、一番古い字形の成り立ちは不明とされています。わたしは勝手に、「苗、あるいは田がいくつかに区切られた状態」のようにみましたが、それが間違った見方だとしても、どうしても今の「助」という字形を想像することができません。ですので、「助」という字形はある程度時代が進み、「助ける」という意味が伝わりやすい組み合わせに置き換えられたのではないかと考えています。このことを踏まえての成り立ちということを前置きしておきます。

 「助」は、
(ショ、かーつ)+力(リキ、ちから)

という組み合わせです。この字形の元となっているのは次のような古い字形です。

 まず、左の「且」は、
「象形。台上に神へのいけにえを載せ積み重ねた形にかたどり、まないたの意味も表す。」『新漢語林 第二版』で、「俎(まないた)」の原字と言われています。まな板と聞くと、台所にある「まな板」が頭に浮かぶと思いますが、足付きの台のような形で、祭祀などに用いるもののようです。それが次第に料理を作るときに用いられるようになりました。
 ですので、ここでの「且」には祭祀のときにお供え物を台の上に「積み重ねる」というイメージがあります。
 右の「力」ですが、一番古い字形は、

と、こんな漢字です。これを人体の腕とみるか、田畑を耕すときの道具「スキ」と見るか意見が分かれるようですが、時代が進んでからの字形をみると、わたしには「スキ」に見えます。

 「且」の「積み重ねる」というイメージは田畑を耕すイメージとも重なるとわたしは思いますし、そのさいに「スキ」という道具を使うことで、作業的に「助かる」というイメージにつながっていくように思いました。また、この字形を人体の腕というふうにみても同じような意味にとれると思いますので、まあ、どちらでもいいように思います。

 いずれにしても、田畑を耕すときの助け合いの精神を表す漢字のように思いました。

*参考資料
『漢語多効能字庫ー「助」』
https://humanum.arts.cuhk.edu.hk/Lexis/lexi-mf/search.php?word=%E5%8A%A9
「まな板の発達に見る機能、形態、材質の変化」石村真一、『芸術工学研究』、九州芸術工科大学、九州大学学術情報リポジトリ
https://api.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_detail_md/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=MD100000&bibid=4061011&opkey=B174882634260617&start=1&listnum=0&place=&totalnum=1&list_disp=20&list_sort=0&cmode=0&chk_st=0&check=0
「助」のはなし『かんじのはなし』yumemivision
https://yumemivision.blog.jp/archives/14157097.html
「春秋時代の籍田儀礼と公田助法」谷口義介、『史林68巻1号』京都大学学術情報リポジトリ
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/238804/1/shirin_068_1_40.pdf


コメント

タイトルとURLをコピーしました