威
音読みは、「イ」。訓読みは、「おどーす(し)、たけーし」。
意味は、
①おどす。おびやかす。「威圧」
②いかめしい(立派で重々しい感じがあり近寄りにくい)。おごそかな。「威厳」
③いきおい。人を恐れさせる力。「威勢」「権威」
*『角川新辞源』に、「しゅうとめ(姑)」という意味もあった<笑>。
この「威」に含まれる漢字、関連性があると思った漢字は、
・「弋」:ヨク、いぐるみ、くい
・「戈」:カ、ほこ(柄と垂直に取り付けたもの。水平のものは「矛」)。
・「戊」:ボ・ボウ、ほこ・*つちのえ(本来の意味とは関係がない)。
*十干(じっかん)の5番目(甲乙丙丁戊・・・)。
・「戉」:エツ、まさかり(普通は、鉞と書く)。
・「戌」:ジュツ、*いぬ(本来の意味とは関係がない)。
*十二支(じゅうにし)の11番目(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)。
・「戍」:ジュ、まもる
まず、「弋」。この漢字には大きく分けて2つの意味がある。
①いぐるみ。矢に糸をつけ、その糸で包(くる)むように捕らえるもののこと。
②くい(杭)。地中に打ち込む棒のこと。
全く別物のような感じがするが、矢も杭も棒状という共通点がある。
そして、棒状の「弋」を柄(え)とし、それに刃物を意味する「ノ」を加えて、上記の漢字が作られたのではないかと思う。
どの漢字も、古い字形は武器(兵器)の一種で、武器の形が少しずつ違っているため字形に違いが生じている。そのため、辞書によって組み合わせが異なっていて、どの組み合わせが正しいのか判断に苦しむが、単純に考えると、
「女」+「戌」=「威」
なのかなあと思う。
一方、興味深いのは『字統』の解説。
「妥」+「戈(カ、ほこ)」
という組み合わせとし、聖なる兵器(武器)を用いて女性を落ち着かせ安心させる儀礼とのこと。
「妥(ダ、おだーやか」は、
「爪(手)」+「女」
で、手で女性を落ち着かせ安心させる意。ということは、
「戌」の「一」の部分が「爪(手)」の省略形と考えていいのかもしれない。
う~ん、この成り立ちも捨てがたい<笑>。
いずれにしても、武器の一種の「ほこ」と「女」との組み合わせで、意味が添えられていったのだと思う。
以上、「威」については、納得できた。
あと、ついでに、「戍」について。
・「戍」:ジュ、まもる
「戍」は「戌」と似ているが、よく見てみると、「戍」は、
・「人」+「戈」
のようにも見えなくはない。「人」の2画目が離れて点になったのではないかと思う。この「戍」の意味は、人が武器を持って、警備に立つことを表していることから「守る」という意味となっている。
最後に「威」を使った熟語で、出題されそうなものをメモしてみた。
・威夷(イイ)
①道の険しいさま。
②道の長いさま。曲がりくねっているさま。*類:威遅(イチ)
・威徳(イトク)
①おごそかで冒(おか)しがたい徳。
②刑罰と恩恵。 *類:威恩(イオン)・威沢(イタク)。
・権威(ケンイ)
①人を強制し、服従させる力。権力と威勢。
②その分野で最高のレベルに達したもの。オーソリティー。*類:泰斗(タイト)
・稜威(リョウイ、いつ)
①みいつ。威光。
②[日本]天皇の威光。*御稜威(みいつ、みいず・づ)
・霜威(ソウイ)
①霜(しも)がおりて、寒さがきびしいこと。
②きびしい威光。霜が万物を枯らすのにたとえる。
・霽威(セイイ、イをはーらす)
雨が止んで晴れるように、怒りが解ける。さっぱりと機嫌を直す。
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