著 者:吉田 裕
発行所:中央公論新社 *中公新書2465
発行年月:2017年12月(初版)、2018年9月(13版)
出版社からの内容紹介:
310万人に及ぶ日本人犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高い餓死率、30万人を超えた海没死、戦場での自殺と「処置」、特攻、体力が劣悪化した補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた現実を描く。アジア・太平洋賞特別賞、新書大賞受賞
随感随筆:
来月廃車を予定している車の乗り納めとして、前々から、いつか必ず訪ねようと思っていた鹿児島”知覧特攻平和会館”へドライブ旅を計画。
事前準備としていろいろ調べる中で、一年ほど前に亡くなった父が高校卒業後に召集されて一カ月半ほど、”志布志”にいたことがわかりました。そして、そのことがわかって間もなく新聞の広告欄にこの本の続編『続・日本軍兵士ー帝国陸海軍の現実』の紹介文が目にとまりました。偶然ではなく必然かもしれません。
戦争というと、その戦いぶりであるとか、戦果が報じられがちですが、この本では、生身の人間が戦争に加わることで生じる問題点を、豊富な証言とともに、具体的に教えてくれています。
例えば、兵士が罹る病気として、虫歯や歯槽膿漏、水虫、長時間の行軍による足の裏の剥離やただれなどが挙げられていました。また、熱帯地域特有のマラリアも深刻な問題だったようです。
長い期間、風呂にも入れず、歯も磨けず、食料は不足して栄養失調。そのような状況は戦う以前の問題であるにもかかわらず、戦時中という特殊な環境においては見落とされがちなのかもしれません。
わたしたちは普段の生活で、朝昼晩と食事をし、歯を磨き、顔を洗います。そして、夜になると眠ります。時にはウォーキングや体操、ジムに通ったり、泳いだりする人もいるかと思います。その当たり前の生活ができなくなるとどうなるか・・・。それは一般市民だけではなく、兵士たちにも同じ問題が生じるのだということをこの本で気付かされました。
一国のリーダーや戦争の中枢にいる幹部の人たちは、戦時中であっても、当たり前の生活が保障されるのかもしれませんが、そういう立場にいる人たちは、一般市民や兵士たちが日常生活を送ることができなくなったらどうなるのかを知る必要があると思います。
この本を読んで、戦争の悲惨さ、そして、戦争の愚かさを、違った角度・視点から知ることができました。
最後になりましたが、2025年1月末に発行された新刊の『続・日本軍兵士ー帝国陸海軍の現実』も良い本ですが、まず先に『日本軍兵士ーアジア・太平洋戦争の現実』を読まれることをお薦めします。
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