どんなかんじかなあ?

中山千夏・文
和田 誠・絵
発行所:自由国民社
発行年:2006年4月(第4刷)

この絵本を読んで:
この絵本の主人公は「ひろくん」。体が段々と動かなくなる病気のため、電動車いすに乗っています。

そんなひろくんの友だち「まりちゃん」は目が見えません。それで、目が見えないってどんな感じなんだろうと目をつぶってみます。すると、たくさんのいろいろな音が聞こえてきます。驚いて目を開けると、前と同じ、しんとした世の中に戻ります。

まりちゃんに会ったとき、ひろくんはこう言いました。

「見えないってすごいんだね。あんなにたくさん聞こえるんだものね。見えるって損だね。ちょっとしか聞こえてないんだものね」と。

もう一人の友だち「さのくん」は耳が聞こえません。それで今度は耳栓で耳を塞いでみます。そして窓の外に目をやると、青空に浮かぶ飛行船、チョウチョなどが目に飛び込んできました。また、お母さんの顔にほくろが七つあることに初めて気づきます。

さのくんに会ったとき、ひろくんはこう言います。

「聞こえないってすごいんだね。あんなにたくさん見えるんだものね。聞こえるって損だね。ちょっとしか見えないんだものね」と。

そう話すひろくんに、さのくんは「考えすぎ~」と吹き出します。

手話ができないひろくんの言葉を口の動きで読み取るさのくんにまたまたびっくり。

もう一人の友だち「きみちゃん」は震災で両親を亡くしています。ひろくんは、どんな感じなんだろうと、一生懸命考えますが、わかりません。そこで、きみちゃんに会ったとき、「きっと、すごおく さびしいんだろうね」と、聞いてみました。

きみちゃんは、ちょっと考えてから、「そうでもないよ」と、答えます。

ひろくんは、「ほんとかなあ、ほんとかなあ・・・」と、つぶやきます。

今度は反対に、きみちゃんがひろくんの立場に立って、動けないっていうことがどんな感じなのか試してみました。

じっと空を見ていたら、いつもの百倍くらいいろんなことを考えて、わかったこともたくさんありました。

そして、ひろくんに、「だからひろくんは学者みたいなんだね」と伝えます。

きみちゃんの言葉にひろくん自身も、動けないことってすごいことなんだと、知ることができました。

ひろくんは、その後も、宇宙のことや分子のこと、古代のことを考えますが、最後に、「動けるって、どんな感じかなあ」と、つぶやきます。

相手の立場に立って、相手を思うことの大切さを教えてくれるひろくん。そして更には、相手のマイナス面ではなく、プラスの面を見つけ出す視点を持つことの大切さをひろくんは教えてくれているように思いました。

この絵本では、障害を持った子どもたちが登場しますが、著者のあとがきにもあるように、私たちみんなそれぞれが、何かしらの問題や悩みを抱えていると思います。そして、それを表には出さず、心の中にしまっている。そういった他者の立場を推し量り、思いやる気持ちをも育ててくれる絵本だと思います。

障害を持っていても明るくふるまうひろくん。でも、「動けるって、どんな感じかなあ」という最後のつぶやきは、さすがに切ないですね。また、きみちゃんの「そうでもないよ」という一言には言葉がつまります。こういう思いをしなくてすむような社会になることを願うばかりです。

著者あとがき:
にこにこ、すてきな女の子に会った。やりたい勉強があって、大学をめざしてはりきっていた。電動の車椅子に乗っていた。体のなかで、自分で動かすことができるのは、指先と、目や口だけだった。日に日にだんだん体が動かなくなる病気。聞いたこともない難しい名前の病気。日本で三人くらいしか例がなく、治療法は今のところ、ない。

にこにこ、すてきな女の子だった。彼女と会って、話して、いろいろなことを考えた。障害のあるともだちのこと。ないともだちのこと。自分自身のこと。みんなそれぞれ何かしらどうにもならない辛さを背負っているということ。でも生きられる。いっしょになら生きられるということ・・・・・・。彼女は私にいろいろなことを考えさせてくれた。そして、「どんなかんじかなあ」が生まれた。ひろくんと彼のともだちの話が、あなたにいろいろな考えを運んでくれたらいいな、と思う。

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