ちいさいおうち

バージニア・リー・バートン/文・絵
石井桃子/訳
発行所:岩波書店
発行年:1965年12月(第1刷)、1998年11月(第43刷)

出版社からの内容紹介:
 静かないなかに、ちいさいおうちがたっていました。リンゴの木や畑にかこまれて、たいへんしあわせでしたが、まわりに工場がたち、電車が通って、にぎやかな町になると、ちいさいおうちは、白いヒナギクや、リンゴの木がお月様の光の中で踊っているいなかの景色を夢見て、さびしく思うのでした・・・・。
 人間の生活に自然がどんなに大切かを、詩にみちた文章と、美しい動きのある絵で見事に描き出した絵本の改訳決定版。この本は、1942年にアメリカの最優秀絵本として、コールデコット賞をうけました。

この絵本を読んで:
 田舎の小高い丘に建てられた一軒のちいさいうち。このきれいで丈夫な家を建てた人は、「どんなにたくさんのお金をくれると言っても、この家を売ることはできないぞ。私たちの孫の孫のそのまた孫のときまで、この家は、きっと立派にたっているだろう。」と、言いました。その言葉通り、長い間、丘の上から周りの景色を眺めながら、幸せに暮らしていきます。
 朝になると、日が昇り、夕方になると、日が沈み、月が出ます。月は三日月から段々と丸くなっていき、それからまだ段々と細くなっていきます。月が出なくなると、星を眺めます。この頃は、街の灯りはずっと遠いところに見えていました。
 春が来ると、野原の草も緑に変わり、リンゴの花がいっせいに咲き始めます。小川では子どもたちが遊んでいます。
 夏には、木々の緑に包まれ、丘は、ひなぎくの花で真っ白になります。リンゴの実は赤く熟しはじめ、子どもたちは池で泳ぎます。
 秋になると、霜が降り始め、木の葉は黄色や赤に染まります。畑の収穫が終わると、リンゴ摘みがはじまります。
そして、冬が来ると、家の周りは雪で真っ白になります。子どもたちはそりに乗ったり、スケートをしたりします。
そんな季節の移り変わりを、ちいさいおうちはじっと見てきました。

 ところが、そんなのどかな風景も、都市化が進み、変化していきます。
 馬車にかわり、自動車が走り始めます。そして、道路が拡張され、道の両側にはたくさんの店や家が並び始めました。人々もなんだか忙しそうです。
 ちいさなおうちはそういった建物にすっかり取り囲まれ、やがて住む人もいなくなり、お掃除をしてくれる人もいなくなってしまいました。季節の移り変わりを感じることもなく、いつが冬なのか、いつが夏なのかわかりません。人々はさらに忙しく、掛け歩くようになっていきました。
 ちいさいおうちはすっかりみすぼらしくなってしまいましたが、壁や屋根は昔と同じようにちゃんとしていました。
 そんなある日、ちいさいおうちを建てた人の子孫にあたる人がそのうちの前を通ります。よく見ると、おばあさんが小さいときに住んでいた家とそっくりです。調べてみると、やはりその家でした。そこで、ちいさいおうちを元のような場所に引っ越しさせることにしました。そして、あちこち探し回るうちに、広い野原の真ん中にちいさな丘が見つかりました。丘の周りにはリンゴの木もあります。
 ちいさいおうちは引っ越しをすませ、丘の上に落ち着いて、うれしそうです。また、ちいさいおうちには人が住み、面倒をみてくれるようになりました。なにもかもが元通りになり、夜は静かに更けていきました。

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