
作:ジョン・J・ミュース
訳:三木 卓
発行所:株式会社フレーベル館
出版社からの内容紹介:
「なにをすることが いちばん だいじなんだろう?」
「いつが いちばん だいじなときなんだろう?」
「だれが いちばん だいじな人なんだろう?」
ロシアの文豪トルストイの「三つの疑問」を、子どもたちに親しみやすい形に変え、人としての真理を優しく説いたミュースの会心作。
ミュースは、トルストイの作品には多くの知恵があり、それを子どもの成長の手助けにしたくて、身近な世界におきかえた絵本を作ったといいます。たとえ十分には理解できなくても、幼い心に何か印象的なものとして残れば、それに惹かれて、またそれを理解しようとして、その後何度も絵本を手にとることになるでしょう。そしていつかきっと、心の支えになってくれる。人生をともに歩いてくれる絵本だと思います。
この絵本を読んで:
主人公のニコライという男の子が3つのなぞについて友だちのサギ、サル、犬に質問をします。それぞれが答えるんですが、ニコライは納得できません。
それで、レオというお年寄りのカメだったら答えを教えてくれるんじゃないかと、会いにいきます。
そこで、畑仕事をしていたレオの仕事を手伝うんですが、突然の激しい雨と風。その風雨でけがをしたパンダの親子を助けます。
パンダの親子が元気を取り戻したあと、ニコライは改めてレオに3つのなぞについて質問をすると、レオは、「もうその答えは、自分で出してしまっている」と言います。
まず最初に、レオの畑仕事を手伝っているそのときが一番大事なときで、大事な人はレオ。そして、畑仕事を手伝うことが一番のなすべきことであると答えます。そして、けがをしたパンダの親子との出会いが、次の一番大事なときで、大事な人はパンダの親子。そのパンダの親子を助けることが一番のなすべきことだったと答えます。
自分自身を振り返ってみると、ニコライと同じように漠然と、「自分は何がやりたいんだろう、何ができるんだろう」と考えていた時期がありました。そして、その答えが見つからないまま、「今」を大事にしてこなかったように思います。
レオが最後に、「自分たちがこうして生きているのは、3つのなぞの答えを知るためなんですよ」と諭すんですが、これは、「答えはあとになってわかる」「だから、生きている今、その時々を一生懸命生きなさい」と教えてくれているように感じました。
この絵本のはじめに、ニコライがこう言います。「ぼくは、いい人間になりたいんだ」と。
この思いがあるからこその悩みであり、3つのなぞが生まれるような気がします。